第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
お初と再会した日から、秀吉は明らかに様子がおかしくなった。目の下のひどいクマに浮かない顔をしてボーッとしている事が多く、いつもの明るさが全くなかった。当然、周りは心配する。
「なんかあったのか?」
そう尋ねる政宗には
「…いや、なにも。」
短く言い
「体の調子でも悪いんですか?」
家康が問えば
「…どこも悪くない。元気だ。」
と弱々しい笑顔で答える。三成にいたっては
「秀吉様?」
「…」
「秀吉様!」
「……」
何度呼んでも返事さえ返って来なかった。そんな秀吉を心配する三人に対し、信長と光秀は何も言わない。
「心配じゃないんですか?」
そう信長に家康が聞いても
「彼奴が己で乗り越えることだ。放っておけ。」
そう答えただけだった。
そんな秀吉を一番心配しているはずの舞も、思い悩んでいる様子で元気がなかった。
「二人の間でなんかあったのか?」
政宗が光秀に問うても
「さあな。なにかあったとしても二人の問題だ。周りが口を出すことじゃない。」
これまた素っ気ない反応。
「そんな!冷たい…」
家康がそう言うと、『これ以上聞くな』と言わんばかりに背を向けて光秀は去って行く。
「…なんなんだ?一体…」
訳が分からない政宗と家康と三成。でも、この状態では自分たちにはどうしようもない。心配なのには変わりないが、黙って見守ることにした。
秀吉はあれからずっと考えていた。
『自分などがこのまま舞の側に居ても良いのか?』
『舞に全てを話しても受け止めてくれるだろうか?』
『話すのはただの自己満足に過ぎないのでは?』
どんなに考えても答えは出ず、何日もろくに眠れず食欲もない。でも、このままでは駄目だと無理矢理答えを出そうとしていた時に、ある光景を目にする。
何日も見ていなかった舞の顔がどうしても見たくなった秀吉は、城の舞の部屋へと向かう。
そこで見たのは
「ううっ、光秀さん…」
光秀の腕に抱かれて泣く舞の姿。光秀の胸にすがり付き号泣している。
「ーーーっ」
秀吉はその光景に一歩も動けなくなった。恋仲になって数ヶ月。舞が己の前でそんな姿を晒したことなど一度もない。自分にはそこまで心を開いていなかったのか…。己が危惧していた通り、舞の心は光秀に移ってしまったのか…。そんな事が頭の中を駆け巡る。
しばらくその場に立ち尽くしていた秀吉だったが、両拳を握り締め、踵を返してその場を立ち去った。