第5章 時を越えて〜適正試験〜
「おお〜〜!!!」
ものすごい歓声が上がった。
射った矢は3本とも的のど真ん中に的中。
射ったのが女性、しかも姫様ということもあり、観客の興奮も倍増だった。
「見事だった。」
そう告げた信長に
「久しぶりだったから、ちょっと緊張しました。」
と悪戯っぽく笑うと、
「失敗しなくて良かった〜。」
と舞は安堵の息を吐いた。
「姫様〜、もう一回見せてください!」
どこからか声が上がると、たちまち観客全体からアンコールがかかり出した。どうしたものかと信長を見れば
「やってやれ。」
と短く一言。
「うーん。分かりました。じゃあ、今度は2本ずつ射る事にしますね。」
あっけらかんと答える舞に周りは耳を疑う。
「アイツ今、何て言った?」
「2本ずつ射ると…」
「そんな事するヤツ見たことないぞ!」
驚く武将たちには目もくれず、さっさとスタンバイする舞。
先ほどと同じように集中し、一気に駆け出す。
パカッ、パカッ、パカッ
2本の矢を構えて的を狙う。
シュッーー
タンッ、タンッ
シュッーー
タッ、タンッ
シュッーー
タンッ、タンッ
6本の矢は1本だけ中心よりずれたが、残りの5本は見事中心に刺さっている。
あまりの事に皆、言葉が出なかった。
『驚きに顎が外れる』とは正にこの事。みんな口をあんぐり開けたまま、呆然としていた。
矢を射った本人だけは
「1本外れたかー。惜しかったなあ。」
とそれこそ的外れな感想を漏らし、周りを唖然とさせたのだった。