第5章 時を越えて〜適正試験〜
いよいよ始まりの時。
野原には信長様と織田軍の武将をはじめ、非番の兵達も集まっていた。女中さんらしき人たちも。そして、多分城下の人たち。気が付けばすごい数だ。
「今日の矢馳せ馬はどなたがされるんだ?」
「やはり家康公じゃないのか?」
「家康公だけじゃなく、他の武将たちも披露されるとか。」
「いやいや、俺が聞いたのは今度新しく城に来た姫様だってよ。」
「姫様?!まさか、姫様が矢馳せ馬なんてするもんか!矢馳せ馬どころか馬にも乗らんだろうに。」
ガヤガヤと色んな声が聞こえて来る。
「舞、用意できたら自分のタイミングで始めていいからな。」
そう秀吉さんに声を掛けられて、無言で肯く。
意識を集中するために目を閉じて深呼吸すれば、もう周りの音は聞こえない。
疾風にまたがり、手綱を思い切り引いて勢いよく駆け出す。
パカッ、パカッ、パカッーーー
スピードに乗った馬の上で上体を起こし、足だけで跨る。
弓に矢をかけ、狙いを定める。
狙うは一点、的の中心のみ。
シュッーー
タンッ
シュッーー
タンッ
シュッーー
タンッ
射った矢は3本。