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《イケメン戦国》時を越えて

第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり


〜秀吉目線②〜
そして、舞と恋仲になって数ヶ月。俺は苦悩に直面していた。
ひとつは…己の独占欲。舞が好きで好きでしょうがないが故に、己の意思とは関係なく嫉妬心が湧いて来る。舞が他の男と楽しそうに話すのを見るだけで無性に苛々する。そして、皆に愛される舞なだけにそう言った現場を目撃することは多い。そんな時は理性を総動員して抑えるが、嫉妬に狂った己を舞に知られたくなくて、いつも気付かれないようにそっとその場を離れた。

特に光秀に対しては酷かった。二人は『家族』であり『親子』だと分かっていてもどうしようもなかった。いくら血の繋がりがあると言っても、もし二人が惹かれ合えば血族同士の婚姻も珍しくない現世において、500年もの時を挟んだ薄い繋がりの二人なら何を遠慮することもない。光秀がその気になれば、舞の気持ちが光秀に向くのは時間の問題だろうし、俺につなぎ止める自信など少しもない。そんな理由から、舞が光秀と過ごす時間を思うと気が狂いそうなほどに焦れた。


ふたつめは…閨のことだ。俺は舞と契りを交わすことに躊躇していた。『誰かと恋仲になるのは初めて』と言った舞はおそらく未通女だろう。舞を怖がらせたり、痛い思いをさせたくない。という気持ちももちろんあったが、一番は『もしも子ができたら…』それが怖かった。

俺は田舎の貧しい村で生まれた。その貧しい村の中でも特に貧しかった俺の生家は『貧乏子だくさん』というやつで、兄弟は8人いた。その兄弟たちは皆、父親が違う。生活のために身体を売る母親が、相手した客の子を孕んでは産み、また孕んでは産みを繰り返していたからだ。兄弟は皆、父親はどこの誰か分からない、母親は身体を売ることしか能がない。そんな家で俺は育った。
幼い頃は『売女の子』と馬鹿にされ、いじめられた。貧しい村と言えど俗識はある。皆が細々とでも真っ当な仕事をする中で、身体を売り次々と父親の分からない子を産む母親は蔑みの対象だった。そんな母親の元に生まれた俺たち兄弟が蔑まれ、忌み嫌われるのは当然だった。
そして、俺が10の時。母親が流行り病で亡くなると俺は村を出た。父親が違うせいか仲が良くなかった兄弟たちとはバラバラになった。皆が今どこで何をしているのかは分からない。逆に、兄弟たちも俺の名が『藤吉郎』から『秀吉』に代わり、今は織田軍の『豊臣秀吉』だということは誰ひとり知らないだろう。
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