第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
〜舞目線〜
光秀さんと親子になってからの安土での生活はとても楽しくて充実していた。明智の邸の人たちは突然現れた『娘』の私を温かく迎え入れてくれて、すごく良くしてくれる。光秀さんも今までの態度が嘘のように優しい。意地悪は相変わらずだけど、いつも私を気遣って大事にしてくれているのが分かるから、それは気にならなくなった。
光秀さんが不在の時に過ごすお城での生活も楽しい。お城の人たちもみんな優しいし、武将のみんなもなにかと構ってくれた。
信長様は時々『囲碁の相手をしろ』と言って天主に呼び出し、南蛮の珍しい菓子や秀吉さんに内緒で隠し持っている金平糖を分けてくれる。
政宗は美味しい手作りの甘味を届けてくれたり、一緒に料理を作ったり、外に出て馬で駆けさせてくれたり…。
家康は『鍛錬の相手しなよ』と言って弓を引かせてくれて、『薬草集めるの手伝って』と野や山へと連れ出してくれる。
三成くんは約束だった『読み書き』以外にも姫として必要な知識をたくさん教えてくれた。
そして、秀吉さんは…。
いつも私を気にかけて声を掛けてくれて、頭を撫でてくれる。茶屋で美味しい甘味をごちそうしてくれたり、反物屋さんに付き合ってくれたり…。いつも当たり前のように側にいてくれるその存在が、気付けば私の中で大きなものになっていた。秀吉さんといるとすごく安心して、心から笑顔になれた。でも、同時にドキドキして緊張もする。初めて誰かをこんなに好きになって、どうしたら良いかと戸惑っていた。
この気持ちが届くなんて思ってない。秀吉さんにとって私は、光秀さんの娘でただの織田軍の仲間。秀吉さんは『安土一のモテ男』と皆が噂するくらいモテる人だから、私なんかを選ぶはずがない。ずっと『男みたい』と言われて来た私は、今まで男の人と付き合ったことはない。そんな女性として見てもらうことさえ難しい私を好きになってもらえるわけないと分かっているのに、秀吉さんを想う気持ちは止められなくて、いつしかそれが漏れ出してしまうんじゃないかと怖くなった。純粋に私を気に掛けてくれる気持ちを裏切ってるようで申し訳なくて、だんだん会うのが苦しくなった。
そんな私の気持ちに気付いた光秀さんから
「怖がらずにぶつかってみろ。」
と後押しされた私は、悩んだあげく玉砕覚悟で気持ちを伝えることにした。きっぱりフラれたら、しばらく坂本城で過ごそうと決意して…。