第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
そんなある日。秀吉は舞に
「付き合って欲しいところがあるの。」
と連れ出されていた。
「どこに行くんだ?」
秀吉が尋ねても
「内緒!」
そう言って教えてくれない。気にはなるが、どこであろうと舞と出掛けられることには変わりない。嬉しさを隠すように
「ったく。しょうがないな。」
そう笑って、舞に導かれるままに歩みを進めた。
四半刻ほど歩いただろうか。
「到着でーす。」
そう舞が告げた場所は湖のほとり。安土の者なら誰でも知っているそこは、誰かをわざわざ改めて連れて来るようなところではない。秀吉が不思議そうにしていると
「秀吉さん、こっち!」
手を引かれて行った場所には
「鴨か?」
「うん!」
鴨の親子がいた。鴨たちは親鳥を先頭に列を成して、ヒョコヒョコとどこかに向かって歩いている。しばらく眺めていると、少し先の池に辿り着き、順番に池に入って行く。その姿がなんとも愛らしく
「かーわいいなあ。」
思わず呟いた秀吉。
「でしょう?心が和むよね。」
と舞も微笑んで言う。
「ああ。そうだな。心が穏やかになるな。」
そう答えた秀吉に
「良かった。秀吉さんはいつも忙しそうだから、少しでも癒されたら良いなあと思ったの。」
「…だから、連れて来てくれたのか?」
「うん。少しくらいの時間なら大丈夫かなって。」
「そうか。ありがとな。おかげで癒された。」
「良かったー!」
舞は嬉しそうに笑った。
そして
「秀吉さん…」
「ん?どうした?」
急に声の調子が変わった舞を心配そうに見る秀吉。
「あのね…」
「なんかあったのか?」
「そうじゃなくて…」
言いにくそうにする舞に
(悩みごとか?)
と余計に心配になり顔を覗き込むように見つめると、真剣な顔の舞と目が合う。
思わず構えた秀吉に
「私…秀吉さんが好きです!」
舞が言った。
「は?」
咄嗟のことで呆然とした秀吉の口から思わず漏れた言葉に、舞は無理矢理、笑みを浮かべ
「秀吉さんが私のことをそんな風に見てないってことは分かってるの。でももう自分の内に秘めておくのは限界だったから…。気持ちを伝えて、きっぱりフラれて…それで…」
そう言いながら途中で俯いてしまった舞。
見ればその小さな肩が震えている。
その姿に堪らなくなり
「…俺も好きだ。舞が…好きだ。」
そう言って、秀吉は舞の小さな体を抱きしめた。