第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
宴の始まる前
「舞」
と舞は信長の座る上座に呼ばれた。謙信と信玄も並んで座っている。そこには光秀の姿も。
「どうしたんですか?」
舞が尋ねると
「そこへ座れ。」
と光秀の向かいを指定される。大人しく言われた通りに座ると
「今から貴様と光秀は親子の契りを交わす。」
そう信長に言われ
「えっ?」
驚く舞。
「貴様と光秀の親子の契りを俺たちが見届ける。」
「…信長様…」
謙信が光秀の持つ盃に酒を注ぎ、光秀がそれを飲み干す。その盃を舞に寄越したので受け取ると、そこへまた謙信が酒を注ぐ。光秀が肯くので、舞も酒を飲み干すと
「これで、光秀と舞は親子となった。ここにいる全員が証人だ。」
と信玄が言った。
「ありがとうございます。」
目に涙を浮かべて言う舞。
そして
「これはお前が持っていろ。」
と光秀がくれたのは懐刀。
「えっ?でも…」
戸惑う舞に
「お前が持っていたものは、俺に渡せ。互いの守りだ。」
そう光秀は言った。
「はい。」
答えた舞の頬には涙が伝っていた。
そうして始まった宴の最中
「舞、良かったな。」
声を掛けて来たのは秀吉。
「うん。秀吉さんも色々ありがとう。」
「俺は何もしてないぞ?お前が頑張って乗り越えて来た結果だ。偉かったな。」
そう言って大きな温かい手で頭を撫でててくれる。秀吉に撫でられると自分の心も温まるようでとても心地が良い。ニコニコと笑う舞に
「光秀は留守が多い。光秀がいない時は遠慮なく頼って良いからな?」
気遣ってくれる気持ちが嬉しい。
「ありがとう。」
舞は心から礼を言った。
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春日山の面々に名残り惜しく別れを告げ、安土へと戻った舞は『光秀の御殿に居を移す』と言い出した。それを光秀と秀吉以外の武将たちが反対する。なぜなら、光秀は仕事柄不在が多く、舞が城から離れてしまうと武将たちの目が届かないからだ。
そんな中、秀吉が『居は光秀邸に移すが、光秀が不在の時には城で過ごすというのはどうか』と提案した。舞の身の安全を考えた光秀はそれを了承し、舞と武将たちも納得したため、舞は城と光秀の御殿を行ったり来たりする生活を送ることとなった。
光秀が不在の時には、光秀の代わりとばかりに事細かに舞の面倒を見る秀吉を見た政宗や家康は
「まるで母親だな。」
「ぶっ。父親が不在でも安心ですね。」
と笑った。