第19章 時を越えて〜分岐〜信長ver.後編 ※R18あり
謙信は佐助とともに、日ノ本中を旅していた。戦が無くなり、持て余す謙信に佐助が提案したことだった。戦が無くなったとはいえ、争い事は絶えずどこかで起こる。そしてなぜか謙信の赴く先々で諍いが起こり、謙信はそれに嬉々として顔を突っ込み、事を治めた。治安が良くなるその行いから謙信は『鎮め神』と人々に有難がられ、謙信本人も気兼ねすることなく刀が振れることに満足していた。
「これが後の警察になるんだろうな。」
佐助が一人呟いたことは誰も知らない。
信玄と義元は甲斐の国でマイペースに過ごす。政ごとはそこそこに自由な時間を満喫していた。信玄は民たちとの触れ合いに重きを置き、田畑を耕すのに参加したり、童らに稽古をつけたりして過ごした。女人好きは相変わらずだが、特定の相手も作らず『広く浅く』のお付き合いを繰り返していた。
義元は『美しいもの好き』が功を奏し、美術商のようなことを始めていた。物の価値を判断する確かな目を持った義元の元へ、色々な者が鑑定して欲しいと訪れる。それを買い取ったり売ったりして行くうちに、気付けば城下に店を構えるほどになっていた。そんな義元の一番のお宝は『御守りくまたん』。『安土の女神』からのあやかり物であれば、破格の値がつくだろうが、これだけはどんなに金を積まれようとも売ることはできない。いつも懐に忍ばせ、大事にしていた。
幸村はーー
「今日はどんな甘味なの?」
「食べてからの楽しみだ。」
そう舞と会話する幸村。幸村はなんと、現代で言う『パティシエ』のように甘味を作り、腕を振るうことにハマっていた。きっかけは、主君である信玄。超が付く程の甘味好きな信玄のために体に、良いものをと試しに作ってみたところ、周りが大絶賛する程の才能を発揮した。それにすっかり気を良くした幸村は、政務の間をぬっては甘味作りと新作の研究にせっせと励んでいたのだった。
そして、今日は三月に一度の新作発表会の日。新作発表会には舞と佐助は毎回、武将たちもその時に都合のつく者が参加する。子がいてなかなか出歩きにくい舞のために、会場は安土城と決まっていた。
本日の参加者は舞、佐助、信長、謙信、秀吉、三太郎と子ども達。
「今日はこれだ!」
と幸村が鼻高々にお披露目したのは
「牛の乳で作った葛餅だ!」
真っ白の葛餅の上にきな粉と黒蜜がかかっていて
「うわー!美味しそう!!」
舞の目が輝いた。