第19章 時を越えて〜分岐〜信長ver.後編 ※R18あり
「美味しい!!」
さっそく試食した舞が感嘆の声を上げる。子どもたちにも好評だ。
男性陣は…
謙信「なんだこの乳くさい食べ物は。」
信長「童の菓子だな。」
三太郎「某は好みですな。」
秀吉「結構うまいぞ?」
佐助「女性と子ども向けだね。」
言いたい放題。それを聞いていた幸村は
「まあ、予想通りの反応だな。」
気を悪くする風でもなくそう言うと
「こっちも食ってみろ。」
と違う種類の葛餅を差し出した。
「…なんだこれは」
出された緑色の物体を見て、訝しげな顔をする謙信に
「まー、いーから食ってみてくださいよ。」
幸村が進めるので、恐る恐る口に運ぶ。
「ーーーっ!…美味いな。」
謙信がそう言うと、他の武将たちも一斉に食べ始める。
三太郎「こっちも美味いですな。」
信長「確かに美味い。」
佐助「こっちは大人向けだね。」
秀吉「これは美味い!茶が入ってるのか?」
みんなの絶賛に
「だろ?こっちは抹茶が入ってんだ。」
そう得意げに答える幸村。そう、牛乳で作った葛餅に抹茶を加え、大人向けのビターな感じに仕上げたのだった。
「いつもこんなに美味しい甘味を作って幸村はすごいね!」
舞が褒めると
「まーな」
満更でもなさそうに幸村が答える。この幸村の甘味開発はその後も続き、政宗と共同開発したり舞や佐助の知識を参考にしたりして、色々な甘味をあみだした。もしかすると、後世に伝わる『信玄餅』や『おやき』は幸村があみだしたものなのかもしれない…。
そんな穏やかな日々はその先も続く。長い年月を掛け、日ノ本国内での領地取りの争いはなくなり、日ノ本はひとつとなった。民の身分の差もなくなり、自由な国『日本』へと変わって行く。
その礎を築いた戦国武将たちを後世の民たちも皆、知っている。学校と言う場で学ぶ歴史書には
『信長を本能寺で救った、後に信長の唯一の妻となる舞姫が現れたことにより、日ノ本は一気に平穏へと進んで行った。織田軍のみならず、上杉、武田、今川、真田からも重宝された舞姫は、日ノ本中の民に《安土の女神》と崇められた。舞姫は石田三成が書き残した書物の中にも登場し、武将たちにとても愛されていたと記されている。』
と小さく書かれている。
500年の時を越えて戦国時代へとやって来た一人の女子。その『安土の女神』はいつの日か『日ノ本の女神』となり、生涯、人々を幸福に導き続けたという。
〜信長編・完〜