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《イケメン戦国》時を越えて

第19章 時を越えて〜分岐〜信長ver.後編 ※R18あり


ーーー数日前、小田原城。
「元就が織田軍に捕らえられました。お市様が連れ去られそうになりましたが、安土の姫君のご活躍で事なきを得ました。お市様は気を失われただけでお怪我はございません。」
新五の報告に、赤くなったり青くなったりと忙しかった顔色が、最終的にはホッとした表情になった氏直は
「よし。それではすぐに市を迎えに参る。」
そう言って立ち上がった。それを
「お待ちください!」
新五が止める。
「まだ、内紛の件が終わっておりません。」
「…そうであった。早急に決着をつける。」
そう言うやいなや、氏直は居室を出て行った。
「やれやれ。お市様のこととなると別人のようだ。」
残された新五は、その様子に苦笑いした。

広間へ氏直が入ると、氏房と家臣たちはすでに勢ぞろいしている。仲裁役として家康と徳川家の家臣数名の姿もある。
「皆の者、お待たせした。」
そう氏直が声をかけると、氏直側の家臣と徳川家の家臣は一斉に叩頭する。家康は軽く頭を下げ、氏房およびその家臣は微動だにしなかった。その様子を気にするでもなく、氏直が話し出す。
「頭を上げよ。此度は皆に報告がある。」
そう言って、側室を勧めた古参の家臣をじっと見つめ
「側室は娶らない。私の妻は生涯、市だけだ。」
と言うと
「ーーっ、氏直様!それは!」
「其方が進めていた話は、織田軍が毛利を制圧した時点で立ち消えだ。其方とやり取りしていた大名は毛利の息がかかった者。」
「なんですと?!そんな馬鹿な…」
「風魔党からの情報だ。間違いない。毛利は自分の息のかかった大名の娘を私の妻に据え、行く行くは北条を乗っとる算段だった。この小田原を織田攻めの拠点、東日本制圧への足掛かりににするつもりだったのだろう。」
「そっ、そんな…」
家臣は真っ青になって項垂れ、周りはザワザワとしている。
「静まれ」
氏直の言葉にそれがピタリと止むと
「其方が北条家の先行きを思い、進言してくれたことには感謝する。しかし、私は今後も市以外の妻を娶るつもりはない。私自身は子ができぬならそれで構わないと思っている。養子を取るつもりもない。…だが、それでは北条家の血が絶えてしまう。そこで私は考えた。」
そこまで言うと言葉を切り、今度は氏房を真っ直ぐ見据え

「家督を氏房に譲り、私は当主の座を下りる。」

「「「「「「ーーーっ!!」」」」」」」
室内が一斉に騒がしくなった。
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