第19章 時を越えて〜分岐〜信長ver.後編 ※R18あり
安芸攻めが成功し、帰城の途についた信長一行。播磨国を抜け、丹羽の国も過ぎようとする頃
「ーー!伝令ーー!!」
早馬がやって来た。
信長の御前で馬を飛び降りた使者は
「秀吉様よりお預かりして参りました。」
そう言って文を差し出す。
「秀吉からだと?」
訝しげな顔で文を読んだ信長の目が丸くなる。そして
「…じゃじゃ馬め!先に戻る。」
舞の作った陣羽織を翻し行ってしまった。
「「信長様!」」
政宗と三成が叫ぶが、信長は振り向かずにどんどん遠ざかって行く。
「なにがあったんだ?」
政宗が呟いたその時
「あのバカ娘!俺も先に戻る。後は頼んだ。」
今度は、信長が投げ捨てた文を拾い上げて目を通した光秀が、駆け出して行く。
「おい!光秀までどうしたんだ!」
「光秀様!」
再び政宗と三成が叫ぶが、同じように振り向きもせず行ってしまった。
「一体、なにがあったんだ?!」
「お二人があんな風に取り乱されるということは舞様の身になにか…。」
二人が訳が分からないと戸惑っていると
「安土でなにがあったんだ?」
信玄が使者に聞く。
「それは…」
言い淀んだ使者に
「言わぬと斬る」
刀に手を掛けながら謙信が脅せば
「いっ、言います!話しますからっ!!実はーーー」
慌てて話出した。
「「「「「………」」」」」
話を聞いた武将たちは空いた口が塞がらなかった。と同時に
「ぶあははははっーー」
政宗が大笑いし出す。するとそれにつられたように
「ぶっ、はははっーー」
「くくくっ」
他の武将たちも笑い出した。
政宗「やっぱアイツは最高だな!ハハハハッ」
幸村「ブハッ!見張り台から矢を射って援護する姫なんて聞いたことねえ。あー、腹痛え。」
信玄「ははっ、さすが天女…いや『安土の女神』か?」
謙信「くっ、どのような状況だったのかじっくり話を聞かねばならぬな。」
佐助「さすが舞さん。アルテミスのようだ。」
三成「『あるてみす』とは?」
佐助「南蛮に伝わる矢の女神のことです。黄金色の弓矢を持つと言われています。」
三成「『矢の女神』…正しく舞様ですね。」
義元「『黄金色の弓矢』か…さぞかし美しいのだろうね。」
三成「そうでございますね。」
義元「そうだ。黄金色の弓矢を舞に贈ろう。」
三成「それは良い考えです。」
三成と義元はどんどん脱線して行く。
幸村「あー、またボケ二人が…。」
呆れる幸村だった。