第19章 時を越えて〜分岐〜信長ver.後編 ※R18あり
「ぐあっ」
「ああっ」
矢を射られた敵は痛みに思わずその場にうずくまる。そこに舞は間髪入れずもう一度矢を放ち、今度はそれぞれの背中に命中させた。
「「ぐああっ」」
脹脛と背中の痛みに立てなくなる敵兵。そこへ、先ほどの家臣が到着した。
「お市様!」
手刀を入れられて気を失ったお市を抱え、家臣は城内へと走る。安全な場所までお市が運ばれたことを確認した舞は、庭に視線を戻した。
「ーーーっ」
背後から敵の攻撃を受けそうになった秀吉を庇った竹蔵の胸に、クナイが突き刺さった。瞬間、竹蔵は地面に倒れ込む。
「竹蔵さん!!」
舞は思わず叫ぶ。そして
「竹蔵さんまで…許さない!絶対に許さない!!!」
お市を攫おうとした挙句、竹蔵まで傷付けられたことに怒りが爆発した舞は
シュッーー
「ぐっ」
シュッーー
「ぐああっ」
シュッーー
「うっ」
見張り台から次々と矢を放ち、敵に命中させて行く。怒りにより、周りが見えなくなった事でいつもより集中力を増した舞は、一本も外すことなく、矢を射って行く。
敵の攻撃の手が緩んだことで、どこかから飛んで来てどんどん敵を射る矢に気付いた秀吉たち。矢の飛んで来る方を見上げれば
「舞?!」
「「「舞様っ?!」」」
舞が矢を放っていることに気付き、仰天する。慌てて止めに走ろうとする秀吉だったが、竹蔵の介抱と敵を捕らえることが先決だと思い直し、まずはそちらに尽力した。
一方、矢を放ち続ける舞の元へ
「舞!もういい!」
そう叫びながら、信興が止めに入った。その声に我に返った舞。
「信興様…竹蔵さんは?」
そう言うと、力尽きてその場に倒れ込む。咄嗟にそれを支えた信興は
「全く…大した女子だ。」
舞を抱えて歩き出しながら、苦笑いした。
その様子を城近くの小高い野原で見ていた元就。
「ちっ、失敗したか。ったく。とんでもないお姫さんだぜ。」
舞の活躍に怒り心頭でそう漏らす。
「まあ、花火は予定通り打ち上げでやる。」
そう言って、後進隊との合流場所へ向かう元就を密かに三太郎率いる饗談が追っていた。
そして、合流場所で饗談より捕らえられた元就と残りの世鬼一族は、安土城へと連れて来られた。
「俺たちを散々コケにしてくれたお礼はきっちりさせてもらうぞ。」
元就を見ながら言う信興の瞳は冷たい。
「はっ。間抜けなお前らに捕まるとは、死んでも死に切れねえな。」