第19章 時を越えて〜分岐〜信長ver.後編 ※R18あり
ーーー数日後、堺の港町。
「元就と世鬼一族を乗せた船が予想通りこちらへ向かっております。」
信興にそう報告するのは三太郎。
「織田もずいぶんと舐められたものだな。」
「……」
「どのくらいで着く?」
「今日、明日中には。」
「こちらは?」
「抜かりなく。」
「相分かった。港も広い。警戒を怠るな。」
「御意」
「三太郎様!!」
「なんだ」
「毛利が姫路より安土へ向かったとの報告が!」
「「ーーーっ!!」」
「すぐに城へ向かう!」
「はっ」
元就と世鬼一族は、警備の目を掻い潜るため、堺の港ではなく姫路の港に寄港し、そこから安土を目指した。信興と三太郎にひと泡吹かせたのだ。その信興と三太郎、元就に裏をかかれたことで怒りはさらに倍増していた。近付くのも憚られるほどの怒りのオーラを纏った二人に、さすがの饗談の面々も震え慄いた。
一方、姫路の港に降り立った元就と世鬼一族。
「くくっ。やっぱり騙されたか。港はひとつじゃねえのに、馬鹿の一つ覚えで堺で待ち伏せるとは、織田軍も大したことねえな。」
「元就様の頭脳が上回っていただけでしょう。」
「くっ。武将は馬鹿ばっかりだからな。安土に着いたらまず、信長の妹を捕獲しろ。」
「はっ」
「花火を打ち上げるのは、目的の品を手に入れてからだ。お前たちは後からこれを運んで来い。」
「はっ」
元就はそう言って、数名の世鬼一族に大筒を運ぶように指示する。
「さあ、祭りの始まりだ。行くぞ。」
元就の掛け声を合図に、安土へ向けて一斉に馬に乗った毛利軍が駆け出した。
信興・饗談と元就・世鬼一族。
先に安土へ辿り着くのは果たしてどちらか…。