第18章 時を越えて〜分岐〜信長ver.中編 ※R18、R20あり
褥に座る舞の側には、信長、光秀、秀吉とお市。
「兄様のお嫁さんに会いたかったのです。」
信長に睨まれシュンとしたお市が言う。
突然現れたお市を
「驚かせてすまなかったな。妹の市だ。」
と信長は紹介した。その頃には平静を取り戻した舞が
「信長様の妹さん?」
そう問うと
「お市様は信長様の妹君で、北条氏直殿の御正室だ。現在は小田原にお住まいだ。」
秀吉が簡潔に説明してくれる。それを聞いた舞が
「そうだったんですね。お市様、舞と申します。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。よろしくお願いいたします。」
お市に挨拶をすると
「私の方こそ、ご挨拶もせずに突然ごめんなさい。市と申します。よろしくお願いしますね。」
とお市も挨拶をする。
自己紹介を終えた二人が、微笑み合っていると
「ところで、市。さきほどの返事はどうした。」
信長が怖い顔でお市に言う。
そして、冒頭のお市の答え。
「貴様は舞に会いにやって来たのか?」
「…はい。」
「くっ、貴様は相変わらず鉄砲玉だな。氏直もさぞかし苦労しておるだろう。」
「そんな!普段は氏直様の妻として、きちんと努めております!」
お市は、信長の言葉に『心外だ』と言わんばかりに反論する。
「信興から兄様が妻を娶られると聞いて、居ても立ってもいられなかったんです!兄様はずっとお独りでいらっしゃるとばかり思っていたから嬉しくて…。」
「…そうか」
「信興が兄様はそのお相手にべた惚れだと言うものだから、兄様が惚れ込むほどの女人がどんなお方なのかお会いして確かめたかったのでございます。」
「……」
「女遊びの激しい兄様が、一人の方に決められたと聞いた時は信じられませんでした。今までは取っ替え引っ替えだったーー」
「市っ、もう良い!」
自分の過去を洗いざらい暴露されるのではないかと焦った信長が、お市を慌てて止める。
「舞、市の戯言など気にするな。」
そう言って舞を見ると、微妙な表情を浮かべている。
「……」
「舞?」
「…誰にでも過去はありますから。」
「…」
「私は夫の浮気に寛容になどなれません。そんな男は大嫌い。浮気したら出て行きます!」
そう言って、プイッとする舞に焦る信長。
「俺は浮気などせぬ。だから機嫌を直せ。」
賢明に舞を宥める信長を見て
「ふふっ、信興の言うことは本当ね。」
お市は嬉しそうに笑った。