第18章 時を越えて〜分岐〜信長ver.中編 ※R18、R20あり
ーーー毛利軍営。
「ふんっ。失敗したか。どいつもこいつも使えねえな。」
心底面白くなさそうに毛利元就が言うと
「如何なされますか?」
報告をしていた家臣が問う。
「決まってんだろ?日ノ本全部を焼き尽くすまで俺は止まらねえ。…次は北条と織田の仲でも引き裂くか。確か、信長の妹が北条に嫁いだんだったな?」
「はい。お市の方と言い、信長がかわいがっていると。」
「そこをつく。世鬼を送り込め。」
「はっ」
歪んだ野望を打ち立てる元就の暗躍は続いていた。
ーーー再び、安土城。
「お待ちください!」
「まずは信長様のご許可を!」
そう叫ぶ家臣たちの声が、武将たちの政務室が居並ぶ廊下に響き渡る。
バタバタバタバタッーー
それとともに聞こえる複数人の足音。
「どうしたのかな?」
大爆笑の政宗が去ったのと入れ違いに
「戻ったぞ。ただいま。」
と入って来た光秀に留守中の出来事を話していた舞が、騒ぎに気付いて尋ねる。
「…」
無言で立ち上がり、襖を開けて様子を伺おうと光秀が引き手に手をかけた瞬間
パアーーーン!!
すごい勢いで襖が開いた。
驚き目を見開く舞と光秀に
「兄様のお嫁さんはどこ!」
襖を開けた人物が大きな声で言う。
呆気に取られる舞に対し、すぐに状況を把握した光秀が
「お市様、相変わらずでございますな。くくっ」
とその人物に声をかける。
「光秀!久しぶりね。」
そう答えた『お市様』と呼ばれた女性は、褥に座る舞に気付くと
「あなたね!」
パタパタとすごい勢いで枕元までやって来た。先ほどからの流れに全く付いて行けない舞が、ポカーンとしていると
「なんてかわいらしい女性なのかしら。お会いできて嬉しいわ!」
そう言って、ギュウと抱きしめられる。その力強さに息のできない舞が
「ぐっ、しっ、しぬ」
と息も絶え絶えに言えば
「お市様!舞が死んでしまいます!!」
後からやって来た秀吉が、そう言って引き剥がしてくれた。
「はあ、はあーー」
秀吉に背中をさすられながら、息を整える舞に
「ごめんなさい!あまりの嬉しさについ…」
腕を離したお市がバツが悪そうに詫びる。
「はあ、はあ…いえ…大丈夫…」
舞がなんとか答えたところに
「市、貴様はここでなにをしている」
そう言って、今度は信長が現れた。
「兄様?!」
「信長様?!」
信長の登場に舞とお市が同時に声を上げた。