第18章 時を越えて〜分岐〜信長ver.中編 ※R18、R20あり
ーーー数日後。
『三恐』の手により密やかに成された明姫と大名一族への報復。天主での政務中にその報告を受けた信長は
「そうか」
一言だけ返すと、『その話は終いだ』と言うように、書簡へと視線を戻した。
一方の舞は、言いつけを守って大人しく過ごしていた。大人しくと言っても、そこは舞。褥の上で信長の陣羽織作りにせっせと精を出している。
『陣羽織を作りたい』そう望む舞のために信長は反物屋を呼び付け、舞と一緒に反物や刺繍糸を選んだ。それを使って、城の針子に教えてもらいながら着々と仕上げている。
そんな舞のところへ
「邪魔するぞ。」
とやって来たのは政宗。手には茶と団子が乗った盆を持っている。
「政宗!…とお団子!!」
自分より団子を見て嬉しそうにする舞に苦笑いすると
「茶でも飲んで休憩しろ。」
と盆を文机に置き、そこへ舞を抱えて移動させた。
「政宗、ありがとう。いただきます!」
そう言って嬉しそうに頬ばる舞は、つわりがあるとは信じられない。そう思った政宗が
「つわりはもう良いのか?」
と聞けば
「うん。なんだか急に治ったの。」
団子をモグモグと噛みながら答える。
「へえ。そんなもんなのか?」
「うーん。良く分からないけど…」
団子を飲み込んだ舞が、そう前置きして話し出す。
「精神的なものもあったのかな?って。」
「精神的なもの?」
「うん。『信長様に迷惑かけたら』ってずっと不安だったから、それが解消されて気持ちが晴れたからかなあと思うの。現に、昨日からは全く気持ち悪くならないから。」
「ふーん。そうなのか。それならウダウダ悩んでないで、早く話しちまえば良かったんじゃねえか。」
「うっ。確かに。」
「だいたい、俺も家康もお前の話を聞いた時点で分かってたぞ?」
「なにが?」
「信長様がお前に惚れてるって。」
「えっ?」
「信長様は、惚れてもない女を孕ませるようなバカな真似はしない。まあ、信長様だけじゃないけどな。お前を抱いた時点で本気だって分かる。」
「どうして?」
「お前は戯れに手を出して良い女じゃねえからな。」
「……」
「でも、まあお前はともかく、信長様が二の足踏んでたのは解せないが。」
「…平手打ちしちゃったから」
「はっ?」
「『最低!』って信長様の頬を打っちゃったからかも…」
「………ぶっ!ははははっ。やっぱお前は最高だな。」
大爆笑の政宗だった。