第18章 時を越えて〜分岐〜信長ver.中編 ※R18、R20あり
光秀の執務室へ移動した舞と信長は、褥に二人で寝そべり、まったりとした時間を過ごしていた。
「早く会いたいなぁ。」
信長の腕の中で、腹を触りながら言う舞に
「ああ」
そう返す信長は、どこか不満気だ。
「どうかしましたか?」
舞が尋ねると
「子ができたことも、産まれて来ることも喜ばしく思うが…」
「??」
「貴様と二人きりで過ごす時間が減る。」
そうポツリと返す信長に
「ぷっ」
舞が吹き出す。
「なんだ」
「ふふっ。子にやきもちですか?」
「……」
バツが悪そうに黙り込む信長。
「あーあ、もったいないことしちゃったなぁ。」
「もったいないこと?」
「だって…信長様に早く自分の気持ちを伝えていれば、もっとこうやって過ごせたのかなあって。」
「……それは俺とて同じだ。恐れず貴様にぶつかれば良かったと悔やんでいる。」
「信長様…」
「初めてだ。何かを恐れたのも、己の行動を悔やんだのも。貴様といると経験したことのない事ばかり起こる。」
「……」
「自分から女に『触れたい』と思ったのも、女の中で果てたのも、共寝して深く眠ったことも、失うのが恐ろしかったものも今まではなかった。」
初めて聞く、信長の本音に舞も心をさらけ出す。
「私も、恋人でもない人と寝たことも、中で受け入れたことも初めてでした。…始めは、好きでもない人と寝た自分を責めて後悔しました。流されてそんなことをした自分が信じられなかった。でも、後になって気付いたんです。私はあの時すでに信長様のことが好きだったんだって。好きだから受け入れたんだって。」
「……」
「信長様のことが好きだって気付いたのは、『お守りくまたん』を作った時。みんなに渡すものなのに『信長様が喜ぶものを』って考えてる自分に気付いて『ああ、好きなんだ』って思いました。だから、お守りを受け取ってもらえて、本当はすごく嬉しかったんですよ?」
信長は舞を思わずギュッと抱きしめる。
「俺も幸いな気持ちだった。。貴様の優しさと温かさが伝わって来るようで受け取ってからずっと懐に入れていた。…今も入れている。俺の大事な守りだ。」
そう言って、懐から取り出したお守りくまたんは、少しくたびれている。
「少しくたびれてしまったな。」
申し訳なさそうに言う信長に
「嬉しいです。ずっと持っててもらえるなんて思ってなかったから…」
そう返す舞の目は潤んでいた。