第18章 時を越えて〜分岐〜信長ver.中編 ※R18、R20あり
「貴様にもらったものを大事にせぬわけがない。」
「はい…。嬉しいです。」
信長は舞を再度、ギュッと抱きしめて額に口付けを落とす。
「貴様に関することで大事ではないものなどない。」
「私も信長様の全てが大事です。」
今度は唇に触れるだけの口付けをして、お互い笑い合う。
「あっ、そうだ!あのっ、信長様!」
「なんだ」
「今度の戦のお守りに陣羽織を縫ってはいけませんか?」
「陣羽織?」
「はい。以前から作りたいと思っていたけど、迷惑だったらどうしよう?と勇気が出なくて…。ダメですか?」
「だめであるはずがなかろう。」
「わあ!じゃあ、張り切って作りますね!」
「ああ。でも、無理はするな。」
「はい!」
そう答える舞は満面の笑み。信長も釣られて笑顔になった。
「舞、愛している。」
信長からの突然の愛の言葉に、舞は真っ赤になってモジモジしていたが
「…私も、愛しています。」
はにかんでそう答えた。
そんな二人が醸し出す室内の甘い空気を
「失礼いたします。」
入室を請う声が遮った。
襖を開けて入って来た光秀が
「おっと。お取り込み中でしたか。これは失礼いたしました。」
とわざとらしく驚いて言うと、
「わっ、光秀さんっ、これは別にっ」
あわあわと焦り出す舞と
「添い寝していただけだ。」
と憮然と答える信長。そんな二人の姿に光秀はフッと笑うと
「仲がよろしくて微笑ましいことだ。」
と目を細めた。
「舞に話があるのだろう?」
褥から起き上がり、枕元に座った信長が光秀に聞くと
「話?」
起き上がろうとするのを信長に遮られ、横になったままの舞も聞く。
「ああ。しばらく留守にすることをお前に伝えようと思ってな。」
「えっ?」
「視察に出掛けることになった。」
「…そうですか。寂しいけど、お仕事だからしょうがないですね。」
「ああ。十日ほどで戻る。」
「はい。その頃には動けるようになっているように、大人しく待っていますね。」
「良い子だ。」
そう言って、光秀が頭をポンポンとすると舞は嬉しそうにする。そんな二人を複雑な表情で見ている信長。それに気付いた光秀が
「くっ。親子の戯れです。ご心配なく。」
と言えば、
「…分かっていても、面白くはない。」
拗ねたように言う信長がかわいくて
「くくっ」
「ふふっ」
舞も光秀も思わず笑顔になる。
信長の頬はほんのりと赤く染まっていた。