第18章 時を越えて〜分岐〜信長ver.中編 ※R18、R20あり
一方、明姫の父である大名は、与えられていた客間に家臣共々、拘束されていた。
「信長様に御目通り願いたい!」
何度も訴える大名に対し
「明姫の愚行はご説明した通り。此度の件、信長様は大変ご立腹されている。お家断絶の御覚悟を。」
「明は、あの性悪な小娘を成敗しようと動いただけのこと。下賤の小娘の本性をお話すれば、信長様もーーーっ」
大名がそこまで言ったところで、三太郎に取り仕切りを任されている竹蔵が、殺気を露わに大名の首に刀を差し向ける。
「舞姫様への冒涜、許すまじ。」
今まで丁寧な言葉で穏やかに対応していた竹蔵の豹変に大名はおろか、家臣たちも震え上がる。
「舞姫様は、明智家直系の血を引くお方。光秀様とも正式に親子となられた。そちらの家柄よりも格上の明智家の姫君に対する愚行の数々、死んでも詫び切れるものではない。」
「なっ、なんだと!話が違うではないかっ!!」
竹蔵の話を聞いた大名が、一人の家臣に食ってかかる。
「……」
黙り込む家臣。
「この者を牢へ。」
竹蔵が部下にそう指示すると、家臣は牢へと連れて行かれた。
「あの者は?」
竹蔵が大名に尋ねると
「……」
今度は大名が黙り込む。
「毛利の者だな?」
「ーーーっ」
竹蔵の言葉に大名の顔色が変わる。
「無言の肯定か。…三太郎様。」
竹蔵がそう言うと、音もなく現れる三太郎。
「さて、どのように料理いたしますかな?信興様、光秀様?」
そう言いながら、三太郎が開いた襖の外には信興と光秀が立っていた。
「さすが、饗談。手際のよろしいことだ。」
光秀が言うと
「ふっ。ここまで筋書き通りだと逆につまらないな。」
信興が面白くなさそうに言う。
そんな二人を見ていた大名たちの背中には冷たい汗がいくつも流れ落ちていた。淡々と話すその目は氷のように冷たく、発せられる気は刃のように鋭い。青白く燃える怒りの炎が、二人を取り巻いているように見えた。
「信興様、あの女は自分に任せていただけますか?」
光秀が言うと、
「なにか面白い策でもあるのか?」
信興が聞く。
「獣好きなお方がお相手をお探しなのでご紹介して差し上げようかと。」
「…くくっ、なるほど。鼻ぐらいの高い女にはうってつけだ。」
「では、そのように。」
「ああ。残りは俺と三太郎でたっぷり料理してやるとしよう。」
「「御意」」
大名たちは微動だにせずガタガタ震えていた。