第18章 時を越えて〜分岐〜信長ver.中編 ※R18、R20あり
舞は夢を見ていた。
「母上!」
自分を母と呼び、満面の笑みで駆けて来る男児。
「吉法師!」
そう呼んで男児を抱き留める。男児の後ろにはーー
「信長様!」
そう言葉にしたところで目が覚めた。
「舞!」
すぐに聞こえて来る愛しい人の声。
「信長様」
もう一度呼べば
「大事ないか?」
と言いながら、頬を撫でてくれる。
「…ここは?」
「客間だ」
「……あっ!私…階段から…子は?子は無事ですか?!」
急に現実に戻り、信長を問い詰める。
「案ずるな。子は無事だ。」
信長は舞の目を覗き込み、そう優しく返す。
「…良かった。無事で良かった。」
舞は腹に手をやり、目に涙を溜めて、本当に嬉しそうに笑った。
「だが、家康の見立てでは、しばらくは動いてはならぬと。」
「えっ?」
「少し出血している故、大事を取れと言っていた。」
「…そうですか。分かりました。動けないのは辛いけど、この子のために我慢します。」
「ああ」
信長はそう言って立ち上がると
「光秀の部屋まで運ぶ」
と舞を横抱きに抱えた。
「信長様?!自分で歩けますから!」
驚いた舞が言うが
「『歩いてはならぬ』と家康からの命だ。」
「……」
そう言われれば黙るしかない。
「重いのに、すみません。ありがとうございます。」
申し訳なさそうに言う舞に
「重いだと?貴様は子もいるのに軽過ぎる。もっと肉を付けろ。」
信長が不満そうに返す。
「つわりであまり食べられなかったから…。」
「……辛い時に側に居てやらず悪かった。」
「そんな!私が隠していたのだから、信長様は悪くありません。」
「…そうか。では、これからは俺を頼れ。」
「はい。」
そんな会話をしながら、部屋を出てきた二人を見て
「「「「「舞!」」」」」
「「「「「「舞様!」」」」」」
廊下にいた武将たちや家臣たちが声を上げる。
「気分は悪くない?痛むところは?」
すぐに寄って来た家康が問う。
「大丈夫だよ。いつもありがとう。」
笑顔で舞が答えると
「うん。とりあえず良かった。でも、しばらくは絶対安静だから、大人しくしててよね。」
「信長様に聞いた。辛いけど我慢する。」
「うん。そうして。」
「はい。」
そこまで話して、舞はふと、ある一点に目が行く。
「九兵衛さん?!どうして…」
そして気付く。
「あの時…」