第18章 時を越えて〜分岐〜信長ver.中編 ※R18、R20あり
「診察は終わったか?」
光秀が襖の外からそう声を掛ける。
「はい。開けて良いです。」
家康が答えると襖が開く。
そこには、織田軍の武将たちと信興、三太郎に加え、春日山の面々も揃っていた。
「舞は?」
心配でしょうがないといった風の秀吉が尋ねる。
「外傷はほぼないです。子は流れてはいないけど、大事を取ってしばらく絶対安静です。目を覚ましたら光秀さんの執務室に運ぶけど良いですよね?」
家康の説明に安堵の表情を浮かべた光秀が
「ああ、もちろん。」
と答えると、他の面々もホッと息を吐く。
「九兵衛は?」
家康が尋ねると
「まだ眠ったままだ。」
光秀が辛そうに返す。
「…そうですか。あのままだと体が冷えてしまうので、移動させます。」
そう言って、家康は出て行った。光秀も後を追い、他の面々も次々とその場を後にする。
残ったのは信長、信興、三太郎の三人。
「舞様をお守りできず、誠に申し訳ございませんでした。この責は此度の件が終わり次第取らせていただきます故ーー」
「良い。舞も子も無事だった。貴様は引き続き、舞を守れ。」
床に額を擦り付けて詫びる三太郎が言葉を言い終える前に、信長がそう答える。責任を取って去るなり、切腹するなりの覚悟を決めていた三太郎は
「しかし、それでは某の気が済みませぬ。」
そう言って食い下がるが、
「貴様の気がどうなろうと関係ない。俺が『天下布武』を果たすまで、貴様は俺の手足として動いてもらわねばならぬ。志半ばで辞すのは許さん。」
「ーーーっ」
信長の言葉に、三太郎は目頭が熱くなる。
「有難き幸せ。この三太郎、信長様が『天下布武』を成し遂げられるその日まで、引き続き手足として仕えさせていただきます。」
「ならば良し。」
「……」
「此奴はいたく貴様を気に入っておるからな。おらぬと悲しむ。」
「…恐れ多き事にございます。」
「…やらんぞ」
「……」
「くっ、兄上。ご心配なさらずとも、誰も兄上から舞を奪ったりはしませんよ。」
二人のやり取りを聞いていた信興が、堪らず口を挟んで笑う。それにムッとした信長が
「奪われたりはせん!」
そう言うと、ますます信興は笑う。
「はっはっはっ。舞が絡むと兄上はほんに愉快ですね。」
そして急に真顔になり
「そんな舞を傷付けた代償はどれほどのものか。処理はお任せいただけますね?」
「…ああ。好きにしろ。」
信興と三太郎が肯いた。