第18章 時を越えて〜分岐〜信長ver.中編 ※R18、R20あり
「どいて!」
家康がすぐに舞と九兵衛の状態を診る。
「信長様!光秀さん!舞を一緒に持ってください!」
そう言って、極力動かさないように三人で舞を下ろす。
「気を失ってるだけです。でも、外傷と腹の子はここでは…」
脈を診た家康がそう言うと
「客間へ運ぶ!」
信長が抱き上げようとするのを
「待ってください!」
佐助が割って入って来て止めた。
「なんだ!」
「極力動かさないように運んだ方が良いです。この襖、借ります。」
そう言って、ガタガタと襖を一枚外し
「この上に乗せて運びましょう!」
と襖を指差した。それに家康が
「なるほどね。ありがと。」
そう言うと、舞は襖の上に移され、すぐ近くの客間に運び入れられた。
九兵衛も診た家康が
「九兵衛は頭を強く打っています。今動かすのは危険なので、しばらくここのまま様子を見ます。意識が戻れば大丈夫です。」
そう光秀に告げる。
「分かった。俺が見ている。」
光秀はそう言うと、九兵衛の側に座った。
秀吉と三成は階段を登り切ったところへと来ていた。そこには
「三太郎殿!」
明姫を拘束した三太郎がいた。
「状況の説明を。」
そう言って三太郎が経緯を説明すると、秀吉と三成の顔色が変わる。秀吉が階段下にいた家臣を呼び
「この女を牢へ連れて行け!!」
そう吠えた。
自分のやった事の重大さが分かっていない明姫が、階段下の光秀の横を通る際に
「信長様も光秀様も武将様たちも、あの女に騙されてるだけですわ!あちこち男を渡り歩いて手玉に取ろうとは、本当に下品で強かな女。」
と吐き捨てるように言う。
それを聞いた光秀が
「……この俺を本気で怒らせたことを永遠に後悔し続けるが良い。」
氷のように冷たい声色で言う。光秀から発せられるビリビリとした怒りのオーラに、明姫のみならず、周りの家臣たちもあまりの恐ろしさに震え、冷や汗をダラダラと流した。
「来い!」
と明姫が引っ張って連れて行かれたのと入れ替わりに
「なにがあった?」
そう言ってやって来たのは
「「「信興様?!」」」
突然の信興の登場に周りの家臣たちが驚きの声を上げるが、それを気にする風でもなく、信興は階段の方を見やると
「三太郎」
と三太郎に声を掛ける。三太郎はすぐ様、信興の側へ駆け寄り跪いて状況を説明した。
「なるほど。それは許せないな。」
そう言う信興の顔は驚くほどに冷たい。