第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
互いの想いを打ち明け、長い長い口付けを交わした二人。
「来い」
そう言われ、舞は信長の胡座の上に座り、腕の中に収まる。
互いの体温が心地良い。
「もう500年後には帰らぬな?」
信長がそう聞くと
「はい。と言うか、帰れないんです。」
「帰れない?」
「お腹に子がいるのにタイムスリップしたら、私も子も命が危ないって。佐助くんが。」
「なに?」
「本当は帰るつもりだったんですけどーー」
「ならん!貴様を500年後になど帰さん!」
信長の勢いに呆気に取られた舞が
「クスクス。そんなに怒らなくても、今はもう帰ろうなんて思ってません。」
笑いながら言う。
「本当か?」
「本当です!元々、帰ろうと思ったのは、子のことで信長様に迷惑をかけたくなかったからですから。」
「…貴様という奴は」
信長が舞を強く抱きしめる。
「もう離さん」
「はい。もう離れません。」
「ならば良し」
最後は目を見て笑い合い、もう一度口付けを交わした。
「光秀に詫びねばならぬな」
信長はそう言って、舞を連れて天主を出る。二人で手を繋いで歩きながら、信長が光秀に鉄拳を食らわされた経緯を話す。
「ふふっ、光秀さんを怒らせると怖いんですね。」
「ああ」
「優しくしてくれて大事にしてくれて…光秀さんのこと大好きです。」
舞の言葉に複雑な顔をした信長は、話題を変えようと
「それで、生まれるのはいつだ?」
と尋ねる。
「えーと、弥生の頃です。」
舞がそう答えると
「春か。その前に祝言をあげねばな。」
「祝言?!」
「夫婦となるのだ。当たり前であろう。」
「あっ、そっ、そうですね。」
「なにをそんなに焦っている?」
「まだ実感が湧かなくて…。『夫婦』って言葉にびっくりして慌てちゃいました。」
チュッーー
「実感したか?」
「えっ、あっ、こっ、こんなところで!」
「くっ、貴様は本当に飽きぬな。」
「あっ!もう!またからかって!」
膨れる舞を信長が笑う。
そんな二人の姿を密かに見ていた影が三つ。