第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
〜信長目線③〜
「でも、それじゃ…」
「『でも』も何もない。俺が良いと言っている。それでは納得できぬか?」
「…子のために夫婦になるのに、不出来な私では申し訳なくて。」
そう言って、舞は本当に申し訳なさそうにする。
「『子のため』…貴様はそうかもしれぬが…」
「…」
「俺は愛する女を妻とするために、貴様と夫婦になる。」
「愛する女?」
「まだ分からぬか!貴様を愛していると言っている。」
「ええーーっ?!」
舞は大声で驚きの声を上げると、目玉が飛び出るであろうくらいに目を見開き、固まった。
「…信長様が…私を?」
「ああ」
「愛して…る?」
「ああ。貴様が俺を好いていなくとも、俺は貴様を愛している。貴様は俺に愛されて妻に望まれた。俺の妻になる上でそれ以外の条件が必要か?」
「…ううっ、ぐすっ」
「なぜ泣く。……そんなに嫌か?」
「ーーっ、ちがっ…うれしくて…」
「…」
「私も信長様を愛してるからうれーーきゃっ」
思わず強く抱きしめる。
「…なんと言った?今、なんと言ったのだ」
「…私は信長様を心から愛しています。」
ああ、俺はど阿保だ。
舞の心を見ようともせず、怖がって逃げてばかりいた。
蓋を開けてみればなんてことはない。
俺たちは互いを想い合っていたのだ。
今なら分かる。
光秀が俺を殴った理由も、政宗と家康の行動の意味も。
情けない。
『天下人』だと称していた己は、ただの情けない男ではないか。
愛する女から逃げ回り、鉄拳を食らうまで気づかぬとは…。
「ふっ、俺もまだまだだな。」
自嘲してそう呟いた俺に
「信長様?」
舞が不思議そうな顔をする。
舞とのことは、最初から最後まで検討違いで間抜けで…周りに醜態を晒しただけだったが、それでも締めくらいはしっかりせねばな。
「舞」
「はい」
「生涯側にいろ。俺の妻となり、俺の子を産め。」
「…はい。ずっと貴方のお側にいたいです。」
「舞、貴様だけを愛している。」
「私も信長様だけを愛しています。」
そうして、俺は舞の唇に喰らい付いた。