第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
「できないって…どういうこと?」
佐助の言葉に驚いた舞が尋ねる。
「簡単だ。『時空を越える』ってことは、体に大きく負担が掛かる。」
「そうなの?私は全然大丈夫だったけど…」
「それは本当に運が良かったんだね。」
「えっ?」
「俺はこの時代に飛ばされてからしばらくは、ひどい頭痛に悩まされた。実証されたデータがあるわけじゃないけど、記憶を失くしたり、体の一部が動かなくなったり…タイムスリップによる人体への影響は計り知れない。」
「…知らなかった…」
「うん。話してなかったからね。それを含めて話をしたくて俺は来たんだ。はっきり言う。妊娠してる状態でタイムスリップなんてしたら、君かお腹の子、どちらかの命が危ない。可能性で言えば、胎児であるお腹の子は高い確率で死ぬ。」
「「「「ーーーっ!」」」」
佐助の言葉に皆、顔色が変わる。
「お腹の子になにかあれば、母体への影響も少なからずある。そんな危険を犯してまで、君を現代へ送り出すことは俺にはできない。」
「……」
「舞」
「はい」
「佐助の話を聞いた今、俺もお前を帰すことはできない。」
「光秀さん…」
「お前や腹の子の命が掛かっているなら、お前を監禁してでも行かせない。」
「当然だな。」
「当たり前。」
「…二人とも…」
「と言うわけだから、舞さん。帰るのは諦めて。」
「…うん。この子を危険な目に合わせるわけには行かない。」
そう言ってお腹に手を当てる舞は、もう母親の顔だった。
「分かってもらえて良かった。」
「佐助くん、ありがとう。」
「いや、礼には及ばない。…それで、父親は誰なの?」
突然、確信を突いて来た佐助に
「えっ、いや、あのっ」
舞があたふたし始める。
「もう観念したら?」
「そうだ。そうだ。潔く吐け。」
と家康と政宗がさらに追い詰める。それでも思い切れない舞に
「じゃあ、今から言う名が当たりなら縦に、ハズレなら横に首を振ってもらうというのはどうだろう?」
と佐助が提案すると、舞が肯いた。
「えーと、まずは。これはハズレ前提の質問だから、練習みたいなものだ。…光秀さん?」
ブンブンと思い切り横に振る。
「当たり前だ。」
光秀がムッとした顔で言う。
「まあまあ。今のは練習なので。じゃあ、次は…信長公?」
「……」
首も振らず、言葉も発せず固まる舞。
「ビンゴか。」
「びんご?」
「『当たり』ってことです。」