第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
「とにかく!この体で暑気中り起こすまで無理するなんて、無茶なんてもんじゃない。しばらくは安静にさせてください。」
診察を終えた家康が怒ったように言う。
「ああ。わざわざ悪かったな。」
「…別にいいですけど。起きたら水分をたくさん取らせて、滋養のあるものを食べさせてください。」
「ああ、分かった。」
「じゃあ、俺はこれで。」
そう言って家康が立ち上がろうとした時、
「ーーんっ」
舞が目を覚ました。
「舞?!」
「……家康…ここは…」
「光秀さんの御殿。」
「…ああ…また…迷惑かけた…」
そう言って舞は泣き出した。慌てて側へ行った光秀が
「迷惑など掛かっていない。気にせず休め。」
涙を拭ってやりながら、優しく言うも
「…私の…せいで…みんなが…悪く言われる…光秀さんのこと…言われたら悲しい」
途切れ途切れでそう言って、ますます涙を流す。
光秀は堪らず舞を抱き起こし、腕の中に抱いてやり、背中をさする。
「…誰かになにか言われたのか?」
「…」
舞は答えない。
「誰がなんと言おうと、迷惑などではない。真実は俺たちが分かっていればそれで良い。外野の言うことなど、気にするな。」
そう言ってやるも
「光秀さんや他のみんなが悪く言われるなんて嫌だよ!光秀さんは、私に優しくして大事にしてくれて…他のみんなも。それなのに、私みたいな下品な人間が側にいるせいで…。だから、安土から早く離れようと思ったのに!また迷惑かけて、私はどうしてこうなの…。ごめんなさい。光秀さん、本当にごめんなさい。」
心から悲しそうにそう言うと、舞はさめざめと泣いた。
「「「……」」」
光秀も家康も政宗も舞のその姿に何も言えなかった。
舞をここまで追い込んだのは、言われた言葉だけではないことは分かっていた。舞を孕ませた相手に憎悪の気持ちが湧いて来る。
「舞」
家康が呼ぶと、舞は涙に濡れた顔を上げた。
「誰の子なの?」
今、聞くべきではないのかもしれない。でも、それが分からないことには、舞を救うことはできない。と心を鬼にして聞く。
「……500年後の…」
そう答えた舞に
「はっ、500年後のヤツだって?嘘つくんじゃねえ!そんな前空いた嘘に俺たちが騙されると思ってんのか!」
政宗が強い口調で言う。
「……」
「佐助とお見合いするって話の時にあんた『決まった相手も好きな人もいなかったから』って言ったよね?」