第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
光秀が連れ帰った舞を見て、邸の者たちは大騒ぎだった。
「舞様!」
「どうなさったのですか?!」
皆が口々に心配の声を上げる。
「普段は静かなこの屋敷が、舞の存在ひとつでこうも変わるのか。」
と、光秀は場にそぐわない感想を漏らす。
舞を部屋へと運び、女中に着替えを任せると
「九兵衛」
「はい」
「内密に家康を呼べ」
「御意」
九兵衛はすぐに動き出した。
四半刻が過ぎた頃、
バタバタバタッーーー
ものすごい足音とともに
「舞!!」
家康がやって来た。その後ろにはなぜか、政宗。
「なぜ政宗まで?」
光秀が言うと
「勝手に付いて来たんです!そんなことより、舞は?」
「ああ、あっちだ」
そう言って、褥を指差すとすぐ様、家康は舞の元へと向かう。
「俺に隠し事とは、水臭いヤツだな。」
ムスッとした顔で言う政宗に
「おや、俺とお前はそんなに仲良しだったか?」
いつもの調子で答えるものの、光秀の表情は浮かない。
「なにがあったかは知らねえが、俺にできることは何でもしてやる。お前たちだけで抱え込むな。」
そう言葉をかけてくれる政宗に
「ああ」
光秀は一言だけ返した。
舞を診察していた家康が
「…光秀さん」
光秀を呼ぶ。
「…なんだ」
これから言われる事を分かっていながら、そう答える。
「…いつからですか?」
「…春日山から戻ったあたりには確信したようだ。」
「誰の…」
「知らん」
「知らないわけないでしょう!」
「言わぬものを無理矢理聞き出すわけにもいくまい。」
「……」
光秀と家康の会話を聞いていた政宗が
「なんの話だ?」
「「……」」
二人とも答えない。
「家康、なんの話だ?」
声を低くした政宗が再度問うと
「……子が…」
「子が?ーーーっ!まさか」
「…舞の腹の中に子がいます。」
驚いて目を大きく見開いた政宗は、我に返ると光秀の胸ぐらを掴み
「相手は誰だ!!」
と怒鳴った。
「だから、知らん。」
再度、そう言う光秀に
「ふっ、舞に口止めされてるってか?」
掴んだ手を離しながら政宗が半笑いで言う。
「……」
「…お前は…お前は、いつから気付いてたんだ?」
「……」
「舞があの話をした時にはもう、気付いてたんだろう?」
「…ああ」
「だから、舞を御殿に移したのか…。ったく、お前らは揃いも揃って抱え込みやがって!抱え込むのは明智の血筋か?」
政宗が呆れたように笑った。