第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
しばらくして目を覚ました舞は、光秀の姿がないことに気付く。喉が渇いた舞は、厨へ行こうと部屋を出たところで、明姫にばったり会ってしまった。
「あら舞姫様、ご気分はもうよろしいのですか?」
明姫に聞かれ
「先ほどは失礼いたしました。少し休んだら回復しました。」
そう答えると
「どちらかへ行かれますの?」
と再び聞かれる。
「厨へお水を貰いに。」
「まぁ、そうなのですね。ところで、こちらはどなたのお部屋でしょう?明智光秀様かしら?」
「はい。そうです。」
「舞姫様は、色々な殿方と仲睦まじくていらっしゃるのね。」
「えっ?」
「信長様のみならず、光秀様とも関係をお持ちなのかしら?もしかすると、他の武将様たちとも?」
「……」
「姫と言いながら馬に乗り回して矢を射り、女中も使わず自ら厨へ行かれるなんて、お育ちが知れますわね。」
「……」
「あなたのような下品な方に、信長様は似合いませんわ。身の程を弁えて行動なさるのがご自分のためですよ?」
「……」
「では、失礼いたします。」
そう言って去って行く、明姫。
普通に考えれば、言いがかりも良いところだが、妊娠中で不安定な状態の舞には全て本当のことを言われているとしか思えず、自分のせいで信長や武将たちが悪く言われることにショックを受けた。自分を気遣い大事にしてくれる光秀のことを言われたのが何より悲しかった。自分がいることで迷惑を掛けている。そう思うと居た堪れず、舞は城を抜け出した。
城から出た舞は、光秀の御殿へと戻った。一人で戻った舞に、家臣や女中たちは驚いたが
「忘れ物をしてしまって…。すぐに城へ戻ります。」
そう言って誤魔化した。自室へ入ると、光秀宛に『ありがとう』の文を書き、現代から持って来たバッグを持って、御殿を出る。
「今から歩いて行けば、タイムホールには間に合うよね?」
そう独り言を言いながら、歩く。
誰にも挨拶できなかったことは心苦しいが、これ以上は迷惑は掛けられないと、安土城へ向けて頭だけ下げると再び歩き出した。
舞が安土を出て一刻が過ぎた頃、謁見の場から部屋に戻った光秀が舞がいないことに気付く。厠かもしれないとしばらく待つが、戻って来ない。途端に頭の中で警笛が鳴り出す。急いで広間へ戻り
「舞がいなくなった!」
その場にいた武将たちへ叫ぶ。こんなに焦っている光秀を見たことのない皆は驚くが、すぐに動き出した。