第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
ーーー翌日、安土城。
同盟国の大名が謁見に訪れるため、舞も織田家所縁の姫として同席するよう言い渡されていた。
「舞、大丈夫か?無理はするな。」
心配してくれる光秀に
「大丈夫です。」
と笑顔で答えるが、顔色はあまり良くない。それを化粧でなんとか誤魔化し、謁見の場へと参上した。
「織田家所縁の姫、舞様にございます。」
秀吉がそう紹介すると
「舞と申します。お見知り置きくださいませ。」
ときれいな所作で挨拶する。
「おお、これはまた。誠に美しい姫様でございますな。」
大名が鼻の下を伸ばして言う。それに愛想笑いで返し、つわりの気持ち悪さをなんとかやり過ごす。
「噂によれば、舞姫様は矢馳せ馬がお得意とか。」
「はっ、はあ。」
「ぜひ、拝見してみたいものですな。ハハハハッ。」
「機会がございましたら是非。」
なんとかかわしたと安心したのも束の間、
「今日は我が娘も同席させていただいておりますので、ぜひご紹介を。明、こちらへ。」
「はい。お父様。」
「娘の明(あき)と申します。」
「明でございます。どうぞお見知り置きくださいませ。」
そう言って、紹介された姫はとても美しく高貴な人だった。
「信長様もそろそろ、嫁取りをお考えのことかと。よろしければ、ぜひ娘の明もお考えいただければと思います。」
そう言われた信長は
「ああ」
と一言返した。
それをすぐ隣で聞いていた舞は目の前が真っ暗になる。信長もいつかは嫁を娶るだろうとは思っていたが、自分のいるうちにそんな話が出るとは思ってもいなかった。顔色の一気に悪くなった舞に気付いた光秀が、
「舞姫様はこれにて失礼いたします。」
そう言って、舞を連れ出した。
謁見途中の中座に、大名をはじめ家臣たちも顔をしかめたが、信長は何も言わなかった。機転を効かせた秀吉が、
「申し訳ない。舞姫様は少々、体調を崩していて、大名に一目お会いしたいと無理を押して参上したものの、最後までは持たなかった様子。大名には大変失礼した。」
と頭を下げてくれたおかげで、場は収まった。
光秀に連れ出された舞は、光秀の執務室で
「無理せず横になっていろ。」
そう言ってくれる光秀に甘え、褥の上に横たわった。妊娠中特有の眠気ですぐに寝息をたて始めた舞を、光秀は複雑な顔をして見ていた。