第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
〜信長目線②〜
そう自覚すれば、何もかもが納得が行く。それなら尚更、舞の機嫌を直さねば。今まで、誰かの機嫌を取ろうとしたことなどない。どんな戦略を組み立てるよりも難解な問題に、頭を抱えた。
そうしてしばらく考えていると
「信長様、舞です。」
舞が再びやって来た。
俺に最後通牒を突き付けに来たのか?そう思えば、体が冷えて行く。それでもなんとか
「入れ」
と告げれば、入って来た舞が俺に詫びた。
なぜ、お前が詫びる?
そう不思議に思っていると、どうやら平手打ちを食らわしたことを気にしているらしい。頭から湯気が出そうなくらいに怒っていたかと思えば、半泣きで詫びを入れて来る。
(貴様という女は)
そう思わずにはいられない。
この俺を振り回し、愉しませる存在など舞だけだ。
舞が気にせぬようにと、軽口をたたけば『夜伽など二度としない。お互い忘れましょう!』と怒鳴って出て行った。
その言葉に俺は打ちのめされた。
やっと自覚した想い人に、たった今、振られたのだ。
そして、思い直す。
昨日の己の子種が舞の中で根付くかもしれない。卑怯でもそうなれば、舞は俺のものになるのだ。と。
子を成したか分かるまでは、黙って見守ろう。そう決めた。
そしてーーー
その考えが甘かったことを思い知る。
舞が『500年後に帰る』と言い出したのだ。
光秀が『案ずるな』と言っても、『まだ考えたい』と言う。
『俺では舞が残る理由にはならない』
そう思い知らされた俺は、舞が光秀の御殿に移ることにも何も言えず、ただ見ていることしかできなかった。