第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
それからは一度も、誰とも寝たりはしていない。
その後は信長が何事もなかったように振る舞うので、舞も気にするのはやめた。『誰にでも失敗はある』そう思って気持ちを切り替えた。
それなのに…
信長と寝た後、一度も月のものが来ていない。この時代に飛ばされる直前に終わった後は一度も来ていなかった。最初は、急な環境変化のせいだと気にしないように努めていたが、今まで一度も狂うことなく来ていたものが来ないことはとても不安だった。もう二月近くも遅れている。
(妊娠していたらどうしよう?)
日に日に不安は募って行った。
そんな中で、明智光秀の書状を見た舞はさらに追い詰められた。
みんなは『残れ』と言ってくれるが、本当に信長の子を孕んでいた時は、ここにはいられない。子ができても信長を困らせるだけだと分かっているだけに、誰かに相談することもできず、悶々としていた。そして舞はある決意をする。
(後、二週間待って来なかったら現代に帰ろう。それまでに月のものが来たら、光秀さんのところでずっとお世話になろう。)
と。
(万が一、現代に帰る前に妊娠が発覚した時には、相手は現代にいる時の人だと言おう)
そう心に決めた。
そんな舞の様子に気付いている光秀。
信長と舞のコトがあったあの日、たまたま用があって天主を訪れた。声を掛けようとしたが、漏れ聞こえる艶やかな声に
「改めるか」
とその場を離れた。信長は女と寝ても、朝まで過ごすことはない。それを知っている光秀は、翌朝もう一度、天主を訪れた。
舞は気付かなかったが、舞が天主から飛び出した時、廊下には光秀がいた。
「舞だったか…」
昨夜の相手が誰であったを瞬時に悟る。
見ている限り、二人は恋仲ではない。信長の戯れであろうか?でも、それを舞がすんなり受けるとも思えない。
(解せないな)
そう思いつつも、考えても仕方ないと光秀は頭の中を切り替えた。
以前の己の立場であれば、それで終わった話だったが、舞が明智の人間だと分かった今、何もせず傍観しているわけにもいかない。そう思うが、舞が子を孕んでいると知れば、信長様はどうするのか?それが分からない以上、動きようがなかった。
ただ、分かるのは、子を孕んでいた時は、舞は500年後に帰るだろうということ。信長に迷惑をかけないように。優しいあの娘なら、何も告げずに去るだろうということだった。