第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
部屋に戻った舞は、己の愚かさが悔しくて堪らなかった。今まで好きでもない男と寝たことなどない。雰囲気に流されて…など、絶対にあり得なかった。
(バカなことをした)
と己を責めても『信長様と寝た』という事実は消えない。しかも、信長様に無理矢理された訳でもない。自分がバカだった。ただ、それだけ。それなのに、信長様にビンタまでかまして…。自分の軽率さに自分でも呆れた。
「これからどうしよう?」
信長様にビンタした自分はきっと、もうここには置いてもらえない。この先を思うと、ますます後悔ばかりが浮かんで来る。
「とりあえず、信長様に謝ろう!」
そう決心し、身繕いを始めた。
そうして舞は、再び天主へと向かう。
『出て行け』と城を追い出されたらどうしようか?そればかりが頭に浮かんで来て、足取りがだんだん重くなる。それでもなんとか自分を奮いたたせ、襖の前で大きく息を吸い
「信長様、舞です。」
そう告げると、しばらくの沈黙の後
「入れ」
と返って来た。
そうっと襖を開き、
「失礼します。」
と中に入る。顔を上げて見れば、
「ーーーっ!」
頬に手拭いを当てる信長の姿が飛び込んで来た。
「ごめんなさいっ。本当にすみませんでした。」
思わず謝る。畳みに着くくらい下げた頭をそのままに、心の中でも何度も謝った。すると
「なにがだ」
そう信長が言う声が聞こえ、恐る恐る顔を上げ
「叩いたりして、本当にごめんなさい。」
涙目で再び詫びる。そんな舞の姿に
「くくっ、今度は詫びるのか。貴様は本当に飽きぬな。」
信長が笑い出した。
「えっ?」
最悪、討ち首も覚悟していた舞は拍子抜けする。
「なんだその間抜けな面は」
そう言われ
「…怒ってないんですか?」
と問えば
「怒っているのは貴様だろう?」
とまたおかしそうに言う。そんな信長に呆気に取られた舞は、しばらくポカーンと口を開けたままだった。
「俺に平手打ちを食らわした者など、貴様が初めてだ。」
信長の言葉にハッと我に返り、
「…ごめんなさい。」
と言えば
「良い。俺の夜伽が余程気に食わぬかったのだろう。」
とニヤリと笑う。
「そっ、そんなっ」
慌てふためく舞に
「俺も精進せねばな。」
そう言って再びニヤリと笑う信長を見て、揶揄われていることに気付いた舞は
「夜伽なんて二度としません!昨夜のことはお互い忘れましょう!!」
そう叫んで天主を後にした。