第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
舞と信長が体を繋げたのは一度だけだった。
適正試験が終わった日、佐助や舞の話を聞いた信長は、『500年後のことをもっと知りたい』という思いで舞を天主に呼び出した。
「失礼します。」
そう言って入って来た舞に
「二日間大儀であった。労いに酌でもさせろ。こちらに来い。」
そう言って、信長は張り出しに座る自分の側へ呼んだ。
「はい。」
そう素直に答えて、隣に座った舞に盃を差し出すと
「ありがとうございます。でも、お気持ちだけいただきます。」
と断って来た。自分の酌を断る人間などいたことのない信長は、舞の行動が理解できない。
「なぜだ」
「あまりお酒が強くないので、飲むと部屋に戻れなくなってしまいます。」
そして、述べた理由も全く理解できない。
「戻れなくなったら、ここで休めば良かろう?」
「えっ?ここで?!」
「ああ。俺の褥で共に休めば良い。」
「はあ?!なに言ってるんですか!一緒になんて寝れるわけありません!」
「なぜだ?」
「なぜって…。普通は恋人でも夫婦でもない男女が一緒に寝たりはしないでしょう?」
「そうなのか?」
そもそも、物心ついて以後、誰かと共寝したことなどない信長には『普通』というものが分からない。
「…そうなのか?って…。信長様は好きでもなんでもない人と一緒に寝ても平気なんですか?」
そう問われ、
「俺は女と褥を共にしても、一緒に眠ったことなどない。女に限らず誰かと共寝するなど考えられん。そもそも、俺はあまり眠らん。」
信長が事実を告げると
「……」
舞は黙り込んだ。
「なぜ黙る」
そう問えば
「…私はここに来て少ししか経っていないけど、信長様はいつもお忙しそうです。それなのにあんまり眠らないなんて、体を壊してしまうんじゃないかって心配になりました。」
「なぜ貴様が俺を案ずるのだ?」
自分が眠ろうが眠らまいが、それを舞が心配する意味が分からず、信長は思ったままを尋ねる。
「なぜって…。信長様は得体の知れない私をここに置いてくださった恩人です。お世話になっている人を心配するのは当然じゃないですか?」
「恩人か…。俺が貴様をここに置くのは『益』がある。ただそれだけだ。恩を感じる必要などない。」
全く噛み合わない会話に、舞はだんだん苛立って来る。
「誰かにお世話になって感謝するのは当然です!誰がなんと言おうと信長様は私にとって『恩人』なんです!」