第17章 時を越えて〜分岐〜信長ver.前編 ※R18あり
舞の抱える秘密を隣の部屋で密かに聞いていた光秀は、舞の告白に居た堪れず、広間の襖を開いた。
「ーーーっ!…み…つひで…さん…ど…して…」
開いた襖の先に立つ光秀に驚いて目を見開く舞を真っ直ぐに見つめ、光秀は舞に歩み寄って行く。
ーーー刹那
光秀が舞を掻き抱いた。
「全くこのバカ娘は…」
そう言う光秀の声が震えている。
「お前一人を背負うくらい、造作もない。」
「えっ?」
「お前が俺を案ずるなど、500年早い。それに、お前は弱くない。大丈夫だ。」
「…光秀さん…聞いて…?」
「ああ。良く頑張った。良い子だ。」
そう言って頭を撫でる光秀。
「……ううっ、うわぁーーん!」
舞は子どものように泣き出した。
大泣きする舞の背中を、いつかと同じように光秀が大きな手で優しくさする。
「ヒクッ、ヒクッーー…うっ、うっ」
次第に落ち着いた舞はポツリポツリと話し出した。
「この…時代に来て…光秀さんに会った時…ほ…んとは…嬉しかった。血が…繋がってる人に…会えて…。」
「ああ。」
「会えて…良かった。」
そう言って泣き笑いした舞を光秀は優しい目で見ていた。
「じゃあ、これで帰る理由はなくなったな?」
落ち着いた頃に政宗がそう問うと、
「…それについてはもう少し考えたい。」
舞は俯き、そう答えた。
「なんで?」
その返答に納得のいかない家康がさらに問うが
「ごめんなさい。今はまだ、答えが出せないとしか言えない。」
そう悲しそうに言われ、それ以上は誰も何も問えなかった。一瞬にして静まり返った空気を光秀が壊す。
「言いたくないなら無理に言う必要はない。でも、お前がこの時代にいる間は、お前の面倒は俺が見よう。血の繋がった…いわゆる家族だからな。」
「…光秀さん…ありがとう…ございます。」
目に涙を浮かべた舞が、光秀に頭を下げた。
「ああ。安土に戻ったら、俺の御殿で暮らすと良い。」
「…はい。よろしくお願いします。」
そんな二人のやり取りを皆は黙って見ているしかなかった。
舞が悩んでいるのには口に出せない深い理由があった。そして、光秀はその理由に気付いていた。確かに簡単に口に出せるような内容ではない。何より舞を傷付けたくなかった光秀は、気付いていることは明かさずに、舞を側に置き守る選択をした。
(舞がどのような答えを出そうとも、自分だけは味方でいてやろう)
そう考えていた。