第3章 時を越えて〜素性〜
「ところで、舞。今の話、貴様の言ノ葉だけでは到底納得できるものではない。」
鋭さがなくなった視線でそう言う信長様は、半信半疑といったところの様子。
(まぁ、当然だけど。証拠でも見せられた良いんだろうけど、持ってたバッグや旅行トランクは行方不明だし、着ていた洋服だけじゃ弱過ぎるよね。うーん。)
「そうですよねぇ。現代で飛ばされる前に持ってたバッグでもあれば少しは信じていただけたかもしれないんですけど…。ああ、バッグっていうのは…袋みたいなもので中に荷物が入ってるーーー」
そこまで言うと、
「もしかして、お前の言う『ばっぐ』とやらはこれのことか?」
いつの間にか戻って来た明智光秀がそう言いながらモノを目の前にかざす。
「!!そうです!これです!良かった。ありがとうございます!」
興奮して告げ、手を差し出すが
「これは俺が拾ったものだ。お前にやるとは言ってない。」
意地悪く笑いながら、バッグを後ろ手に隠される。
「ええっ、何でですか?!拾っただけで貴方のものではないでしょう?そもそも、私のものです!!」
そう言ってむくれる私を愉快そうに見ると
「冗談だ。くくっ、直ぐムキになるとは童のようだな。」
とさらに楽しそうに笑いながらバッグを返してくれた。
「童って!もう!……でも、アリガトウゴザイマス。」
悔しくて棒読みでお礼を告げた。
(ああ、バッグだけでも戻って来て本当に良かった。大事なものが入ってたから)
安堵しながらバッグを開き、中のものを順に並べて行く。
「ええと、まずはスマホでしょ。あっ、まだ充電残ってる。当たり前だけど圏外か…。
それから、お財布、鍵、手帳ーーーあっ!くまたんも♡」