第3章 時を越えて〜素性〜
明智光秀が出て行き、再び静寂が訪れた室内で
「舞、貴様の証言で俺を狙った溝鼠を早々に退治できそうだ。良くやった。」
信長様が満足そうに肯いた。そして
「しかし……貴様が500年後の世から来たのも、光秀の謀反も本当だったのだとしたら、なぜ俺は今も生きている?」
信長様がポツリと呟いた。
(そう、そうなんだよね。信長様の言う通り、史実通りなら私が信長様を助けた状況はおかしい。死ぬはずだった信長様が生きているなら、今後の歴史が大きく変わってしまうことになる。大丈夫なのかは私も分からない。分からないけど、でも、信長様は生きているから。)
「なぜなのかは私には分かりません。だけど、あの場面で信長様を助けなかったら私は一生後悔していました。助けられて、自分が誰かの命を救えて良かったと心から思います。信長様も生きてて良かったと思っているなら、それで良いんじゃないですか?きっと、生かされる理由があったんです。まだ死んじゃダメだったんです。それだけです。」
そう言って微笑むと、一瞬目を大きく見開いた信長様は
「くっくっくっ、貴様は大うつけだな。」
と言って楽しそうに笑った。