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《イケメン戦国》時を越えて

第15章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.中編


「家康が笑った!」
嬉しそうに言う舞に、
「あんたが元気になるならいくらでも笑う。」
家康はボソリと呟いた。
「えっ?」
「なんでもない。とにかく、無理せずいい子にしてること。もし悪化してたら、にが〜い薬を処方するから!」
「ええっ?!それだけは勘弁して〜!」
「じゃあ、大人しくしてな。」
「はあい」
そんないつものやり取りの後
「じゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃい。気を付けて。」
「うん。」
家康は部屋を後にした。

廊下を歩いていると、幸村に出会す。
「行くのか?気を付けてな。」
そう声を掛けて来た幸村に
「話しておくことがある。」
返事もせずに家康が告げる。
「なんだ?」
「舞の記憶が少しずつだけど、戻りつつある。断片的に頭に浮かぶだけで、その記憶がなんなのか結びついてはいない。今後も会話や情景がきっかけになって、どんどん思い出して行くと思う。」
「…そうか」
「それで、気を付けて見てて欲しいことが2つ。無理に思い出そうとしてたら、それは絶対に止めて。無理矢理思い出そうとすると、体に異常をきたす可能性がある。」
「異常をきたす?」
「激しい頭痛や発熱。最悪、昏睡。」
「……」
「舞の記憶は、ご両親の死や明智家のこと…一気に思い出して受け止めるには重過ぎる。耐えきれずに精神がやられるようなことにならないように、無理はさせるな。」
「分かった。」
「2つ目はーー」
「分かった。必ず守る。」
「うん。頼んだよ。」
そう言って、家康は行ってしまった。

「俺がしっかりしなきゃな!」
家康から言われた言葉をもう一度頭に叩き込み、幸村は舞の部屋へと急いだ。

「舞、入るぞ。」
そう断って襖を開ければ、舞は文机の前に座っていた。
「舞?!お前なにしてんだよ!」
褥から抜け出し、文机まで移動している舞を幸村が諫める。
「退屈だから、読書でもしようと思ったんだけど…読めないの。」
悲しそうに言う舞の手には、佐助が『暇つぶしに』と持って来た童向けの絵本。簡単な文字だったが、現代人の舞にとって、崩し文字の解読は難しい。『教えてくれる』という三成との約束が果たされる前に春日山へ来たため、学ばず仕舞いだった。
「…そっか。まあ、ずっと寝てるだけじゃ暇だよな。」
「うん。」
「良し!俺が教えてやる。」
「えっ?いいの?」
「おー。でも、横になってからな。」
「うん!ありがとう!」
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