
第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編

「村正…」
佐助がポツリと言うと
「飼い主は最低だけど、村正は最高だね。」
義元が悪びれる様子もなく言い
「ほんと。義元様に同意。」
家康も不機嫌そうに言う。そこへ
「おいおい、二人とも。幸もものすごく反省してるし、義元の鉄拳も食らったんだ。村正に免じて許してやってくれ。」
と信玄が助け舟を出すと
「…信玄様。」
「でも、幸。次はないぞ。」
「はい。二度としません。」
幸村は光秀を真っ直ぐ見つめ、そう答えた。
「近江と越前はどうなってる?」
もう終いだと言わんばかりに、話題を変える謙信。
三太郎「朝倉領地はきな臭いですな。」
義元「きな臭い?」
光秀「景鏡が当主となって日が浅い。根強い義景派を抑え切れずにいるのが現状。義景派は毛利と組んで景鏡を討ち、実権をまだ幼い信景に移そうと画策している。」
謙信「ふんっ。阿保な家臣など斬ってしまえば良いものを。」
光秀「代わりに斬って差し上げては?」
謙信「…良いな。ちょうど退屈していたところだ。よし、出陣だ。」
光秀「くくっ」
信玄「こら、光秀。謙信で遊ぶな。」
光秀「いやいや、遊んでいるわけでもない。」
義元「どういうこと?」
光秀「朝倉の騒動を落ち着かせるのが先決。朝倉の領地を毛利に握られては、一気に他もやられる可能性がある。」
信玄「確かにそうだな。信長は何と言ってるんだ?」
光秀「朝倉平定と同時に毛利を攻め入ると。」
信玄「同時にか?」
三太郎「毛利は朝倉平定の隙を狙って討って来るでしょう。元就は執念深い男です。二度に渡り舞様のかどかわしに失敗し、舞様への執着が増している。次はなりふり構わず仕掛けて来るかと。」
謙信「なりふり構わずとは、どうするのだ?」
光秀「恐らく、朝倉平定の間に安土を攻めて来る。同時にここ、春日山へも。」
信玄「織田と上杉を同時に攻めるなんて正気の沙汰じゃないぞ!そこまでの戦力が毛利にあるとは思えないが?」
光秀「毛利は南蛮と繋がっている。銃や大砲に加えて大筒…大量の兵器を蓄えていることも分かっている。それらでドンパチされた日には、安土も春日山も火の海だ。城も無事では済まないだろうな。」
謙信「……」
光秀「毛利を攻めると言っても真正面から討つわけではない。蓄えている兵器を潰すのが目的だ。饗談が船と城に蓄えている兵器を潰し、戦力を削ぐ。船も城も同時に無くなれば、立て直しは不可能だからな。」
