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《イケメン戦国》時を越えて

第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編


それから、舞は幸村に背負われて城へと戻る道を進んでいた。

あの後、佐助は「城へ戻り、事情を説明しておく」と先に行った。佐助の背中が見えなくなると
「ほら、乗れ」
と背に乗るように、幸村が言う。
「重いし、自分で歩けるから大丈夫です。」
と返し、立ち上がろうとする舞だったが
「いーから。つべこべ言わずに乗れ!」
と強引に背負われてしまった。

舞を背負い、村正に
「村正、ありがとな。」
と幸村が言うと、村正は
「ウォン!」
と一吠えする。そんな村正を見た舞が
「あっ!ワンちゃん、怪我してるんです!」
と訴え、見れば後ろ足に布が巻かれている。
「村正、歩けるか?」
と幸村が聞けば
「ウォン!」
とまた一吠えした村正に
「おー。無理はすんなよ。」
そう言って、幸村は歩き出した。

「あのっ」
「ん?」
「ワンちゃん大丈夫なんですか?」
村正を心配し、舞が聞けば
「おー。村正はつえーから大丈夫だ。」
と返って来た。それでも心配する舞に
「大丈夫だから、心配すんな。お前こそ、怪我痛くないか?」
と逆に自分を心配してくれる。その優しさが嬉しくて
「大丈夫です。」
本当は体中が痛くてたまらないのを隠して、そう答えた。

「ワンちゃんの名前『村正』って言うんですか?」
「おー。俺が付けた。」
「そうなんだ。…村正がいてくれたから助かったんです。」
「……」
「なんでそこにいたのかは分からないけど、目覚めたら小さな小屋の中にいて、村正が寄り添ってくれてました。真っ暗でなにも見えなかったけど、ふかふかの毛とあったかい体温に安心して朝を迎えられたの。動けなかった私を、自分も怪我してるのに、あの場所まで運んでくれて…。きっと、痛みを我慢して私をゆきむらさんのところへ連れて行ってくれてたんですね。村正がいてくれて良かった。」
「ーーっ」
舞の話を聞いた幸村の目からは涙が溢れていた。舞を背負い両手が塞がった状態では、拭うことはできない。止めどなく溢れるそれが頬を流れ落ちるのをそのままに、幸村は歩き続けた。
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