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《イケメン戦国》時を越えて

第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編


「大変!すぐ手当てしなきゃ。」
そう言うも、当然ながら手当て道具などない。少し考え、舞は自分の着ている襦袢の裾を破り、足に巻き付けた。
「痛かったでしょう?怪我してるのに運ばせてごめんね。気付かなくてごめんね。」
そう言って、村正の体を撫でる。
「ここで休もう?」
そう言い、舞は這って木の根元まで行き、座る。すると村正もすぐ側に伏せた。

しばらくすると

ガサッ、バタバタッーー
と物音が聞こえて来た。
「…足音?」
誰かが近付いて来る。しかも、複数人だ。
こんな山奥にいる人間など、山賊しかいない。見付かればどんな目に合わされるか…。恐怖を感じた舞は村正をギュッと抱きしめた。
「ワンちゃん、あなたは逃げて。」
そう言って、追い払うように体を押す舞に
「クーン」
村正は悲しそうに啼くだけで動かない。
「お願い。いい子だからーー」
舞が再び逃げるように言おうとしたその時ーーー

「!!舞様!!」

すぐ近くに迫った足音とともに聞こえた声。
「舞!!村正!」
「舞さん!」
最初とは違う人物であろう声もする。声の主たちはすぐに自分と犬のところへ駆け寄って来た。男が三人。二人は忍びの装束を着ている。後一人の赤い着物を着た人物は…
「ゆきむら…」

「舞!大丈夫か?!」
目の前に跪くと、舞の手を握り
「…よかった。無事で…良かった。」
と涙声を出すその人は
「ゆきむら…」
「ごめん。ごめんな。本当にごめん。」
何度も謝った。

「舞さん。無事で本当に良かった。」
そう言って幸村の横にしゃがんだ、緑色の装束を着た眼鏡の人物。
「…あなたは?」
「えっ?」
「あなたは誰?私を知ってるの?」
「?!舞さん?」
「『舞』って私の名前?」
眼鏡の人は驚愕の表情を浮かべている。
「君…記憶が?」
「…はい。なにも覚えてないし、分かりません。」
「でも、幸村の名前を…」
「…分からないけど、この人の顔を見たら『ゆきむら』って浮かんで来て…」
「……」

佐助も幸村も竜も言葉が出なかった。やっと見つけ出した舞は、記憶を失くしている。これからどうすれば…と一瞬考えるが、
「とりあえず、帰ろうぜ。」
幸村が言うと
「そうだな。怪我をしてるみたいだし、急いで戻ろう。」
と佐助も同意する。
「えっ?帰るって?」
「俺たちとお前は同じ場所で暮らしてる。そこに連れて帰る。」
そう幸村が言った。
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