
第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編

十数日に渡った春日山での日々を終え、信玄は甲斐、織田軍は安土へと戻ることとなった。だが、その中に舞の姿はない。
ーーー昨日。
竜「やっと口を割りました。」
信玄「しぶとかったな。」
竜「はい。予想通り、世鬼一族の者。」
信長「やはりか。」
竜「狙いは『噂の安土の姫君』」
謙信「…毛利…斬る!」
竜「舞様も明日、出立されるとか。」
信長「ああ」
竜「毛利は織田傘下に入り込んでいます。こちらに留まるのが最善かと。」
秀吉「ここは安全なのか?」
竜「城は安全ですが、城下には2名。先日は義元様と幸村様が常時お側にいたため、手出しできなかった様子。」
義元「上田城下にもいたよね?」
竜「はい。寛治殿からそのように。」
幸村「……」
家康「じゃあ、道中も危険ですね。いくら俺たちが一緒だと言っても、急襲を受ければ危ない。」
三成「そうですね。相手は忍び。一筋縄では行かないかと…。」
政宗「饗談に軒猿と三ツ者。甲賀者に伊賀者とうちの黒脛巾組…。これだけ揃っても厳しいのか?」
三太郎「忍びは戦闘法が組織ごとで独自。共闘は難しいかと。共闘してもお互いの邪魔にしかならない。」
政宗「そうなのか?」
三太郎「ええ。『陽』に近いのが軒猿と黒脛巾組。中間に甲賀者と伊賀者。『陰』に近いのが三ツ者と饗談、『極陰』が世鬼一族。世鬼一族は手段を選ばず、残忍。最悪、どこかが潰されますな。」
秀吉「噂には聞いていたが、そこまでなのか?!」
佐助「はい。先日の奇襲は一般兵中心だったので捕縛できましたが、世鬼一族のみなら俺たちは今頃ここにいません。」
秀吉「……」
信長「他に選択肢はないな。舞はここに留め置くことにする。」
信玄「三ツ者を数名、入れる。」
謙信「ああ」
信玄「女中も三ツ者だし、城内は大丈夫だろう。軒猿がいるしな。」
佐助「竜、引き続き頼むよ。」
竜「承知」
光秀「近江と越前も調べる必要があるな。」
信長「三太郎と連携して動け。朝倉から目を離すな。」
光秀・三太郎「「御意」」
信玄「舞の側にいなくて良いのか?」
光秀「良い。理解している。」
信玄「無理してるんじゃないか?」
光秀「さてな。舞の望むことは『俺が生きて帰る』ことだけだそうだ。全く酔狂なことだ。くくっ」
信玄「……」
幸村「俺は春日山に残ります。」
信玄「…分かった。しっかり守れ。」
幸村「御意」
光秀「舞を頼む。」
幸村「はい」
