
第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編

ーーーそして昨夜、夕餉時。
「舞」
「はい。」
「貴様はもうしばらくここにいろ。」
「えっ?どうしてですか!」
信長の命令に納得がいかない様子の舞。
「お前の身が危ない。」
「え?光秀さん?どういうこと…?」
「毛利がお前を狙っている。」
「…毛利って、毛利元就?」
「ああ。先日の奇襲も毛利の手の者だ。」
「なんで私を?」
「世の中には物好きがいる。」
「…物好きって!光秀さん、ひどい!」
「くくっ」
「むぅ。相変わらず意地悪!」
「冗談だ。まあ、そうむくれるな。かわいい娘に何かあっては困る。今は安土に戻るよりここに留まる方が安全。ただそれだけだ。」
「…分かりました。光秀さんがそう言うなら、それが一番でしょうから。」
「良い子だ。」
「子ども扱いしないでください!」
「俺はお前の父となったのだ。『子ども扱い』は当然だろう?」
「ううっ」
「くくっ。お前は何も心配せず、ここで守ってもらえ。」
「…はい。…光秀さんも」
「なんだ。」
「光秀さんも約束守ってくださいね。…無事に戻って。」
「…ああ。」
「舞、城からは絶対に一人で出るんじゃないぞ。」
秀吉が心配そうに言う。
「分かりました。」
「庭もダメだぞ。城門までの道でもだ。」
「はい。」
「ここは男ばかりの城だから気を付けろ。それから、団子を食い過ぎて腹を壊さないように。謙信に鍛錬を申し込まれても断るんだぞ?怪我したら大変だからな。あとはーーー」
「おや、舞には母親もいるようだな。」
「「「「「ぶっ!!」」」」」
「なっ!光秀!誰が母親だっ!!」
「違うのか?てっきり俺とお前で舞の両親になったのかと思ったぞ?」
「なに言ってるんだ!俺は舞を心配してーー」
「それが母親だと言ってるんだ。なあ、舞?」
「えっ?あっ……ブッ…秀吉さんがお母さんて…アハハハハッ」
「……」
「あー、えーと、秀吉お母さんの言いつけを守っていい子にしてるね?」
「まーいー!お前まで!!」
「アハハハッ、だって…クスクス…」
「秀吉、舞が嫁に行けなかった時はお前が子を産んでやれ。」
「「「「「ブハッ!アハハハッーー」」」」」
「産めるかっ!笑うなっ!!」
「アハハハッ。ごめんなさい。ふふっ。」
「お前、光秀に似てきた気がするぞ…。」
「だって、同じ血が流れてるんだもん。」
「………」
光秀が2人に増えたと涙目になる秀吉だった。
