第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編
楽しい時間はあっという間に過ぎーーー
最後に舞は
「すっごく楽しかったです!みなさん、ありがとうございました。」
と心からの笑みを見せた。
皆が部屋へと戻る中、
「幸村!」
と舞が声を掛ける。
「ん?」
「今日はありがとう。幸村のおかげで楽しかったよ。」
「おー。それなら良かった。」
「また、付き合ってね?」
「おー。いつでも言え。」
そう言うと、舞の横に並んだ幸村が
「舞」
と真面目な顔で名を呼んだ。
「なあに?」
「…俺がもらってやる。」
「えっ?」
「俺がお前を嫁にもらってやるから心配するな。」
「幸村…ありがとう。」
「おー。」
「幸村は優しいね。慰めでも、そう言ってもらえると嬉しいよ。もしもーーー」
舞の言葉を遮って幸村が言う。
「慰めじゃねえ。本当にそう思ってる。お前が必要とするなら、俺はいつでもいつまでもお前の側にいる。だから頼れ。」
「……ありがとう。本当にありがとう。」
そう言った舞の目には涙が浮かんでいる。
「おー。」
と返した幸村は満足そうな笑みを浮かべていた。
ーーーそして翌日。
舞は広間へと呼び出されていた。室内に入れば、居並ぶ武将たちの姿。
上座に信長、謙信、信玄が並んで座っている。その前に光秀。
「どうしたんですか?」
舞が尋ねると
「そこへ座れ。」
と信長に光秀の向かいを指定される。言われた通りに座ると
「今から貴様と光秀は親子の契りを交わす。」
そう信長に言われ
「えっ?」
驚く舞。
「貴様と光秀の親子の契りを俺たちが見届ける。」
「…信長様…」
謙信が光秀の持つ盃に酒を注ぎ、光秀がそれを飲み干す。その盃を舞に寄越し、それを受け取ると、そこへ謙信が酒を注ぐ。光秀が肯くので、舞も酒を飲み干すと
「これで、光秀と舞は親子となった。ここにいる全員が証人だ。」
と信玄が言った。
「……ありがとうございます。」
目に涙を浮かべて言う舞を皆が笑顔で見ている。
そして、
「これはお前が持っていろ。」
と光秀がくれたのは懐刀。
「えっ?でも…」
戸惑う舞に
「お前が持っているものは俺に渡せ。互いの守りだ。」
そう光秀は言った。
「はい。」
答えた舞の頬には涙が伝っていた。