第13章 時を越えて〜分岐〜家康ver. ※R18あり
ーーー翌日、安土城。
「信長様、ご無沙汰しております。この度はおめでとうございます。」
「ああ、久しいな。息災であったか?」
「はい。おかげさまで。竹千代も半年になりました。」
そう言って竹千代を見せれば、すぐに抱き上げ
「竹千代の見る明日は明るいぞ。」
と笑った。
舞が竹千代を産んでしばらくした頃、信長は『天下布武』を成し遂げた。毛利と和睦を結び、四国と九州に進出し…その最後の戦いが数ヶ月前に終わり、ついに大望を叶えたのだ。
今日の集まりのは『天下布武の祝い』だった。
当然、安土の武将たちと春日山の面々も参加する。皆に会うのが久しぶりな舞は楽しみでしょうがなかった。
この数年で武将たちの生活も変化を遂げていた。
家康に続いて家族を持ったのは、意外にも三成だった。
毛利との和睦の条件に毛利元就の妹姫との婚儀を出され、三成が名乗りを上げたのだ。婚儀の相手は秀吉で話が進もうとした矢先、三成は秀吉を押し退け強引に事を進めた。そんな三成に驚いたのは周りの面々。主君である秀吉を差し置いての行動に、皆良い顔はしなかった。
最も秀吉自身が『そんなに三成が望むなら』と特に気にしなかったことと、信長の『三成でいく』という鶴の一声で、結局は三成の希望を尊重した形で収まった。
そして、いざ輿入れして来た姫は、とんでもない女だった。とにかくわがままな上に、すぐに癇癪を起こす。普通の男ならさっさとさじを投げ出すところ。でも、そこは三成。マイペースを崩さず、姫の目に余る行動も特に意に介さず淡々と生活を送った。
そんな二人も一応は夫婦。夫婦の営みの結果、姫は子を身篭った。そして、十月十日後ーー姫は大騒ぎの末に三成に瓜二つの男子を出産した。
それから、三月後…。姫は毛利へ帰りたいと言い出した。理由は『出産など二度としたくない。子どもなど要らない』だった。さすがの三成も怒り呆れると周りは思ったが、『離縁はしない』を条件にあっさりとそれをのみ、姫は毛利へと帰って行った。離縁しないのは、和睦を反故にされないための策だった。
それ以来、三成は息子と幸せな日々を送っている。
そんな三成を見ていた武将たちは、三成がなぜあそこまで婚儀に積極的だったかに気付く。三成は最初からとんでもない姫だと分かっていたのだ。分かっていたから、主君の秀吉を思い、自分が引き受けた。その深すぎる忠義に皆は敬服するしかなかった。