第13章 時を越えて〜分岐〜家康ver. ※R18あり
〜数年後〜
舞は久しぶりに安土を訪れていた。
「安土に来るの久しぶりだね。」
「俺は頻繁に来てるけど、舞はあの時以来?」
「うん。そうだねー。2年ぶりくらい?みんなにはしょっ中会うけどね。」
「あの人たち暇さえあれば駿府に来るから…。特に義元様…。」
「ふふっ」
そう、舞が徳川へ嫁ぎ、駿府へと移った後は、皆はなにかと理由をつけて駿府を訪れてくれていた。その最もたるが義元で、義元には強く言えない家康を良いことに、駿府城に頻繁に滞在していた。
「先にあっちに行くんでしょ?」
「うん。」
そう言って光秀の御殿へと向かう。
「ただいま戻りました。」
そう言って入って行けば、
「「「「おかえりなさいませ。」」」」
家臣や女中たちが出迎えてくれる。
その側に光秀の姿。
「光秀さん、ただいま。」
「ああ、おかえり。」
親子である二人の大事な挨拶。嫁に行こうとも、明智の家は舞の家。訪れる時にはいつも『ただいま』『おかえり』と言い合った。
それに倣い
「お爺様、ただいま戻りました。」
今年7つになる娘の『桔梗』を筆頭に
「「じいさま、ただいま」」
5つになる双子の『秀家』と『康光』
「じーじ!」
2つになる次女の『葵』
「ばー」
生後半年の三男の『竹千代』。
それぞれ光秀に挨拶する。
「みんなおかえり。」
そう答える光秀は嬉しそうだ。
子ども達の名はそれぞれ、徳川家と明智家にまつわるものにした。両家の家紋に書かれた『桔梗』と『葵』。家康と光秀の名を一字ずつ取った『秀家』と『康光』。
今回、秀家を明智の養子にすることになり、その儀式のために安土を訪れていた。いずれは明智家を継ぐと言っても、秀家は元服までは徳川家で過ごす。光秀の跡目争いが勃発しないよう、早いうちに明智家の跡取りを明確にするのが今回の養子縁組の目的だった。
客間に移動し、茶を飲んでゆるりと過ごす。
「「じいさまー」」
双子は光秀に纏わり付き、桔梗と葵も光秀の膝に乗っている。孫たちは皆、光秀が大好きだった。まだ『お爺さん』と呼ばれるような年齢ではない。でも、そんなことはどうでも良かった。ずっと一人で生きて行くと決めていた自分に、娘ができ、孫ができた。口には出さないが、家康も大事な息子だ。大事な家族に囲まれて、この上なく幸せだと思う。
神仏になど興味はないが、舞と合わせてくれた『何か』にだけは、光秀は感謝していた。