第13章 時を越えて〜分岐〜家康ver. ※R18あり
ーーー卯月、吉日。
「光秀さん、いえ、お父様。今日までありがとうございました。」
そう言って叩頭する舞。
「……幸せになれ。」
光秀はそう一言だけ言った。
家康との祝言が正式に決まった後、舞は居を坂本城へと移した。安土にいた光秀も、毛利との決着がついた後からは坂本城を拠点として動き、親子の時間を重ねて来た。
そして、今日。
舞は家康の領地、駿府へと嫁いで行く。
御供衆5,000騎1万人、輿20挺、長持50挺を引き連れた超豪華な花嫁行列は、坂本城から駿府城まで4日間かけて、ゆっくりと進む。
その行列には、信長をはじめとする安土の武将たち、春日山の面々も参列していた。『行列に参列する』と言う武将たちを、舞と唯一まともな幸村が『そんなのあり得ない!』と必死に止めたが、結局、強行されてしまった。花嫁の駕籠を運ぶのは、三太郎、竹蔵、寛治、竜、弥助と明智家の家臣、九兵衛。春日山への旅路以来、舞と不思議な絆で結ばれた忍びたちが自ら、駕籠者の役を買って出てくれたのだ。これには舞が涙を流して喜んだ。
輿入れの品々も、光秀はもちろん信長と謙信までもが張り切って準備し、これまたあり得ない内容。限度を知らない人たちの張り切りに、最初は戸惑い断っていた舞だったが、そのうち言っても無駄だと悟り、このあり得ない状況を甘受した。
結局は、皆が舞を思い、舞のためにしてくれていること。それが、分かっていたからこそ、受け入れることにしたのだ。証拠に花嫁姿の舞の懐には、明智、徳川、織田、上杉の懐刀があった。それを見た信長も謙信も満足そうに笑みを浮かべた。
長い旅を終え、駿府城へ到着すると、籠から出た舞を晴着姿の家康が出迎える。ギュッと手を握り
「きれいだよ。」
そう言って眩しそうに舞を見つめる。
「ありがとう。家康も素敵だよ。」
幸せそうに笑い合う二人。
城内に入り、婚儀の儀式と祝いの宴が行われた。
皆が二人の門出を心から祝う。
誰もが晴れやかな良い笑顔を浮かべていた。