第13章 時を越えて〜分岐〜家康ver. ※R18あり
予告通り、舞は四半刻ほどで作業を終わらせ、二人で家康の御殿へと戻って来る。光秀がいる時にも不在の時にも、こうして家康の御殿で過ごす時間も多くなった。
二人で夕餉を食べ、湯浴みを済ませて戻って来た舞を
「おいで。」
と家康が胡座の上に座らせる。
家康は一緒にいる時はいつも舞を胡座の上に座らせて甘やかしてくれる。最初は恥ずかしくてなかなか胡座の上に座れなかった舞も、今では胡座の上で過ごす時が何より安心でリラックスできるようになっていた。
「舞、今日もお疲れ様。」
「家康もお疲れさま。」
そう言い合って口付けを交わす。最初は啄むように。そして、だんだん深く。家康の口付けはいつも、愛情をたくさん注ぎ込むように甘くて長い。
「ーーんっ」
舞の口から吐息が零れる時には、舞の体の力は完全に抜けてしまっていた。
「もっと舞が欲しい。いい?」
耳元で家康が囁けば、舞はコクンと肯く。家康はそんな舞に口角を上げ、抱え上げて褥へと移動した。もう何度めかのその行為は、その度に二人の愛を深めて行く。
誰とも付き合ったことのない舞は、当然のごとく未通女だった。この時代で二十歳を越えて未通女な娘など、早々いないだろう。未通女が悪いわけじゃない。でも、そんな自分を家康は呆れてしまうのではないかと舞は不安でしょうがなかった。
実際、口付けはするものの、二人で過ごす夜にも家康はその先へ進もうとはしない。『男おんな』だなんだと言われることの多かった自分には、女としての魅力がないのかもしれない。いや、自分にはそんな魅力などないのだろうと、舞は落ち込んでいた。
一方、家康は『誰かと恋仲になるのは初めて』だと言った舞の言葉と、辿々しい口付けの初心さで、舞はまだ未通女なのだろうと予想していた。家康自身は回数は多くないものの、未経験ではない。元服の時に初めて女を知ってから、付き合いで遊郭に行くこともあったし、断れない接待で女と褥をともにすることもあった。
ただ、経験があると言うだけで、家康自身も好きな女を抱いたことはない。気持ちのない女とは口付けさえ交わさず、自分の欲を吐き出すことしか考えなかった。でも、舞は違う。好きで、好きでしょうがない愛する女なのだ。しかも、相手は未通女。抱きたい。自分のものにしたい。と思う一方で、大事にしたい。傷付けたくない。とも思う。その相反する思いのジレンマに悶々としていた。