第13章 時を越えて〜分岐〜家康ver. ※R18あり
〜家康目線②〜
腹が立った。くだらない嫉妬で舞を傷付け、別れを決意させるほどに追い込んだ俺にも、俺の言ったことも俺の心も全く信じていない舞にも。
「なんで返そうとするんだよ!」
気付けば強い口調で舞を責めていた。
「…だって…一緒にいるのが嫌なのに…妻になんてなれないよ。」
「嫌なんて言ってない!俺は…舞といるのが嫌だなんて一言も言ってない!」
「でも、家康…態度が…急に冷たくなったから…」
舞は下を向いて、小さな声でポツリポツリと話す。
「私…男の人と付き合うとか…恋仲になるって初めてで…。好きでいてもらうにはどうしたら良いのか分からなくて…。知らない間に家康に嫌われるようなことをしたんだと思って、一生懸命考えたけど分からなくて…。思い当たるのは、信玄様と義元さんが私に懐刀を渡そうとした時くらいしかなくて、信長様と謙信様には返そうとしたのに、家康には返さなかったからそれが嫌だったのかな…って。そういう事を言われないと気付かない私となんて、一緒にいるのが嫌になったのかなって思った。春日山を出てから、家康が全然笑わなくなったから、もう私といるのは嫌なんだろうな。めんどくさくなったんだろうなって思ったの。」
「……」
「家康が探してくれてるなんて思わなくて、懐刀を返す…家康から『さよなら』って言われるのを受け止める心の準備をここでしてたの…。ごめんね。面倒かけてごめんなさい。」
そこまで言うと、舞は泣き出した。
心の臓がギュッと握られたように痛かった。
舞の不安や戸惑いなんて全く気付かずに、自分の事しか考えてなかった己が情けなかった。
どうして先に『徳川の懐刀は舞に持っていて欲しい』と言ってやらなかったのか…。
どうしてこの小さな体を抱きしめて安心させてやれなかったのか…。
情けなくて、情けなくて…。
「舞、傷付けてごめん。不安にさせて…ごめん。」
そう言って詫びることしかできなかった。