第13章 時を越えて〜分岐〜家康ver. ※R18あり
〜家康目線〜
舞を疑ってる訳じゃない。ただ、誰からも好かれ可愛がられる舞を見るのが面白くなかった。要は嫉妬。舞は悪くないのに、素っ気ない態度で八つ当たりした。
その結果ーー
舞は『自分といるのが嫌になったのか』と問うて俺に謝った。そして、俺の手を離していなくなった。
頭をガツンと殴られたようだった。
俺はなにをやってるんだ。
くだらない嫉妬に囚われて、何より大事なものを傷付けた。
舞はどんな気持ちで手を離し、俺から去って行ったのか…。
何度も名を呼びながら、必死に駆け回って探す。
(ごめん。傷付けてごめん。)
何度も頭の中で謝る。
そして、探し始めて半刻を過ぎた頃。
(いた!!)
宿の近くの川にかかった橋の側の野原に舞は座っていた。
「舞っ!!!」
叫んで駆け寄る。
すると、舞はビクッと肩を揺らし、そのまま膝を抱えて俯いた。
「ハァハァ…」
近くまで寄ると、息を整えながらゆっくり近付く。
そして
「…舞…ごめん。」
俯く舞の隣に腰を下ろして、謝った。
舞は何も言わない。
「…舞…俺がーーー」
「ごめんね。」
くだらない嫉妬のことを正直に話して謝ろうとした俺の言葉を遮って、舞が謝った。
「ごめんね。家康の気持ちに気付けなくて…。鈍くてごめん。」
そう何度も謝りながら、舞は俺に何かを差し出した。
「…これ。遅くなってごめんなさい。宿に置いてたから、取って来たの。」
差し出されたものは懐刀。
徳川家の…俺が舞に授けたものだった。
「ーーーっ!」
心の臓が止まるかと思った。
なぜ舞はこれを俺に返すのか?
その答えを考えると、体中の温度が一気に下がって行く。
「家康が不機嫌だったのは、私がいつまでもこれを返さなかったからだよね?私が持ってて良いものだと勝手に勘違いしてーーー。」
「女人に懐刀を渡す理由は…」
舞の言葉を遮って話し出す。
「えっ?」
「懐刀を渡す理由は相手が『大事な女性(ひと)』だっていう証。自分の妻になって欲しいと思う相手に渡すんだ。」
「…そうなんだ。それじゃ、やっぱり返さなきゃ。これを持ってて良いのは私じゃない。」
「俺は舞に『俺の妻になって欲しい』って言った。」
「…うん。覚えてるよ。」
「じゃあ、なんで返すの?『俺には舞しかいない』、『舞以外いらない』そう言ったよね?」