第13章 時を越えて〜分岐〜家康ver. ※R18あり
なんだかんだと楽しく過ごした春日山での日々も終わり、舞は織田軍の武将たちと安土へと戻る。
懐刀は…結局、返せないまま預かっている。
あの後、悪ノリした信玄と義元にも懐刀を渡されそうになった舞は、全力で逃げた。
その様子を見ていた家康は、帰りの道中も不機嫌さ度合いがマックスだった。
その日の宿に荷物を置き、宿場町を歩く二人。
「家康?」
「……」
「家康?どうしたの?」
「……」
「家康ってば!」
「…なに。」
「なんで怒ってるの?」
「怒ってない。」
「嘘!ずっと不機嫌だし、何か怒ってるんでしょう?私、なにかした?」
「別に…なにもしてない。」
かろうじて手は繋いでくれているが、取り付く島もない家康の態度に
「……嫌になった?」
舞が小さな声で言う。
「えっ?」
「私といるの嫌になった?ごめんね。気付かずにしつこくして。ただ、家康に笑って欲しくて…。…ごめんね。」
「舞?!ちがっーー」
家康が否定するよりも早く、舞は家康の手を離し、もと来た道を走って行く。
「舞!!」
慌てて追いかける家康だったが、忍び装束で人混みをかき分けながら走る舞をあっという間に見失ってしまった。
「舞!!!」
家康は何度も名を呼びながら探し回るが、見当たらない。
舞がいなくなって半刻は過ぎていた。
「どこに行ったんだよ…。」
情けなくそう呟く家康。
(舞になにかあったら…)
そう思うと背筋が凍る。
(お願い、無事でいて!)
そう心の中で叫んで、家康は再び走り出した。